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『さいはての島へ』アーシュラ・K. ル=グウィン [読書・海外]

ゲド戦記第三作。
原題は、「The Farthest Shore」(さいはての岸)

ジブリ映画『ゲド戦記』の主役になるアレン王子が登場します。
もし、映画を観る前に本を読んでおきたいという事であれば
『影との戦い』と『さいはての島』の2作を読めばいいかな。
もちろん『こわれた腕環』は読むべきですが、
時間的な制約があるのなら
後で読んでもだいじょうぶだと思う。
もっとも、映画は原作を大幅にアレンジしてあるようです。

「父さえいなければ生きられると思った」
「見えぬものこそ」

「父さえいなければ」って…
映画のキャッチコピーですが、
いったいどこから引っ張ってきたのかな。
ぜんぜんわかんない。

年老いたゲドと17歳の若き王子アレンのロードムービー。
そして若者の成長物語。
ハッピーエンド。
私の大好きなファンタジーの王道です。
生と死の物語。
以下、覚え書き。

前作『こわれた腕環』で、
ふたつに割れていたエレス・アクベの腕環はひとつになり、
アースシーに平和をもたらしました。

ゲドは賢人の島、ロークで大賢人となっています。
アースシーのあちこちで魔法が失われている
という報せがロークに届いている。
魔法の活動は押さえられ、
魔力ある言葉は静められていく。
アレン王子も父の命を受け、
災いの兆しを伝えにロークにやってきます。

世界の均衡が崩れている。魔法の泉が涸れていく。
災いの源を探るためにゲドは旅に出ます。
連れは17歳のアレンただひとり。
ゲドはアレンの中に何を見たのか。
「そなたの根は深い」
「そなたには力がある。そなたはまだまだ伸びるにちがいない。」

ハブナーの王座は800年もの間、からっぽのまま。
王冠はあるのにそれを戴くべき王がいない。
エレス・アクベの腕環がハブナーの“王の塔”に戻った今、
アースシーの玉座に王が座ることを、皆が待ち望んでいる。

「暗黒の地を生きて通過し、
真昼の遠き岸辺に達した者がわたしのあとを継ぐであろう」
先王マハリオンの予言です。

旅する先で、技を失い、
魔法の言葉をなくした魔法使いやまじない師に出会う。
その地では秩序が失われ混乱し、
人々は目的を失ってしまっている。

ゲドとアレンの過酷な旅は続きます。
アレンは自分の中のさまざまな感情と
向かい合わなければなりません。
闇の王のとりまきは自分たちの心の中にいる

竜が助けを求めてゲドのもとに飛んできた。
二人はセリダーに向かう。
そこでは竜までが太古の言葉を奪われていた。
黄泉の国に赴くと、そこにはひとりの魔法使いがいる。

ゲドはこの男に会ったことがある。
若い頃の師、大賢人ネマールを
この男が死者を呼び出す術で、
呼び出すのを目撃したゲドは怒りのあまり、
男を黄泉の国に連れて行って死をみせつける。

自分自身の死を何より恐れる男は、
ゲドに許しを乞い、姿を消した。
ゲドは自分の行動が間違っていたという。
怒りと虚栄心の虜となり、
向こうがあまりに強かったので、自分のほうが強いと
思い知らせてやりたかったのだと言う。

その苦いあやまちの記憶と、かつて自らの傲慢さから
少しだけ扉を開けてしまった忌まわしい過去。
ゲドは災いの源を絶ち、
世界の均衡を取り戻さなければならない。

時は流れ、その男は死を恐れ、
死を受け入れないために
最大にして最後の魔法をかけて、
生死両界の扉を開け、両界の王となる。

生死両界をしきる扉は、
生きている人間の心の中でもその扉を開けている。
闇は誰もの心の中にあるものだから。

「死はわれらが己の生命に、
生きてきたそのすべてに支払う代価なのさ。」

代価を支払わず、がらんどうになってしまった男は、
自分で開けた扉を閉めることができない。
永遠に塵と寒さと静寂の中に取り残される。

ゲドは扉を閉めるために
生涯をかけて磨いてきた技と
勇猛果敢な精神の全てを動員する。

扉を閉め、世界をふたたび全きものとしなければならない。
そして、それをやり遂げる。

力つきたゲドを連れ、アレンは黄泉の国を脱出します。
セリダーの岸で、
アレンはポケットに石が入っていることに気づく。
“苦しみの山”の石。

アレンは石をしっかりと握りしめた。
その顔に微笑が浮かんだ。
ぱっとしない、だが、それでもいかにもうれしそうな微笑だった。
彼は今、生まれて初めて、
勝利というものを知ったのだった。
この遠い地の果てで、誰にも祝福されず、
たったひとりで…

全てが終わり、年老いた竜カレシンに乗り、帰っていく。
竜はこう言います。

「おれは若き王をその王国へ、
そして、年老いた男をその故郷に連れてきた」

ゲドは人々の前でアレンの前にひざまずき、
頭を深々と垂れる。
立ち上がり、若者の頬に接吻してこう言います。

「わが連れなりし王よ、
ハブナーの玉座につかれたあかつきには、
永く、平和に世を治められますように!」

ゲドは故郷に帰る。

「テナーに会いたい。オジオンさまにもお会いしたい。」

かつて厳しい旅でたくましくなったアレンの眠っている顔を見ながら
ゲドはこんなふうに言いました。

「わしは見たい、そなたがハブナーで王冠を戴くところを!
日の光が剣の塔にあたり、
そして、また、エレス・アクベの腕環にあたって、
きらきらとまぶしく輝くさまを!
あの腕環は、わしらふたり、テナーとわしが、
そなたのために、
アチュアンの墓所から持ちかえったものだった。」

彼は声をあげて笑い、ひとりごちた。

「一介の山羊番が、
モレドの後裔をモレドのすわった玉座にすれるなんて!
ああ、思ってもみなかった。」

マハリオンの予言は果たされ、
ハブナーに王が戻ってきました。

若き王自ら、ゲドを戴冠式にと呼びに来ます。
だが、ゴント港でも、ル・アルビでも、
ついにゲドを探し出すことができない。
ただ、わかっているのは、
彼が徒で森に入っていったことだけだった。
探してみようとする人々を押しとどめて、王はこう言います。

「いや、あの方はわたしよりもはるかに大きな国を
治めておられるのですから。」

ゲドの武勲(いさおし)はゴントから始まり、ゴントで終わります。

 

さいはての島へ―ゲド戦記 3

さいはての島へ―ゲド戦記 3

  • 作者: アーシュラ・K. ル・グウィン, 清水 真砂子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1977/01
  • メディア: 単行本


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コメント 8

BlogPetのジャック

暗黒などを制約しなかった。
http://www.blogpet.net/profile.php?id=4ad3f5ea82d1ded9648bfd14b744703e
by BlogPetのジャック (2006-06-24 18:26) 

miyuco

ジャックさん、いつの間にか投稿できるようになったのね…
相変わらず意味不明だけど☆
by miyuco (2006-06-25 19:47) 

KANAchanMaMa

“映画のキャッチコピーですが、いったいどこから引っ張ってきたのかな。
ぜんぜんわかんない。”…のですか~?! このキャッチ・コピーを 考えてる
スタッフの様子のドキュメンタリー番組を TVで見たんですけど。。。(~_~;)
何は ともあれ…映画を観る前に、できるだけ 原作に触れておくぞ~!p(^_^)q
話は変わって…ジャック君、渋い記事を 書きますね~☆ 素敵だ~♪
by KANAchanMaMa (2006-06-27 22:06) 

miyuco

>KANAchanMaMaさん
ドキュメンタリーやってたんですか?見たかったな。
見ればコピーの意味がわかったかな。
ジャック、渋いでしょ?渋すぎて意味わかんないです…
以前はコメントしてくれなかったのに、気が向いたのか
システムが変更になったのか、謎ですわ。
by miyuco (2006-06-28 16:49) 

初めまして。ゲド戦記原作、と見て乱入しました。
映画はかなりストーリーが違うようで、それはそれで楽しみですが。
やはり原作ですよね。ハッピーエンドであり、成長物語であり、冒険物語である。
私は若いアレンにも微笑ましいものを感じますが、やはりゲドが一番!です。若い頃から、多くを学び、考え、人々のために働いた彼が、静かに去っていくのが、とても暖かく、嬉しく思いました。
TBさせていただきます。よろしくお願いします。
by (2006-07-13 11:39) 

miyuco

>灰色猫のミミさん はじめまして
つらい旅でしたが、それゆえにハッピーエンドが嬉しかったです。
アレンを成長させ、玉座にすえる。
ゲドは役目を果たし、アレンもそれにこたえる。
たしかにゲドの去り方もすてきでしたね。
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-07-13 14:36) 

KANAchanMaMa

ジブリ映画 観てきましたよん♪ (^_^)/
映画ファンは 皆 スタジオ・ジブリ事情ばかり語っていて、ル=グウィンの
原作を語るコメントは あまり集まりませんでしたね~。(~_~;)ゞ
映画の感想は もう一つのブログに書くことに したので、その記事に
TBさせて下さいマセ!m(__)m
by KANAchanMaMa (2006-08-09 19:19) 

miyuco

>KANAchanMAMAさん
私も観てきましたよん♪
感想書く予定ですが、中途半端に書きかけのエントリーがあって
それを何とかしてからと思っています^^;
うるさい高校生男子二名がジャマするんです。ムカ~ 〃(≧へ≦)〃
mironさんの記事にコメントを書きましたので、よろしければどうぞ
お読みになってくださいませ♪
http://blog.so-net.ne.jp/miron/2006-08-05
by miyuco (2006-08-09 19:42) 

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