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『武士の一分』 [日本映画]

静かな映画でした。
加世の鈴をころがすようなきれいな声、
新之丞のやわらかい声、徳平のダミ声。
家の中に満ちている温かい空気が伝わってきます。

加世の立ち居振る舞いのきれいなこと。
「恥ずかしがり屋」の旦那さまの
表情や口調からにじみ出るやさしい感情。
かいがいしく世話をやく加世の幸せそうなこと。
庄内言葉がいいですね。

それが新之丞の失明を境に暗転する。
目が見えるときは真っ直ぐに加世の目を見ることは
あまりなかったというのに
見えない目でじっと見つめる。冷たい目。
あの目で見つめられたら、加世はつらいです。

加世を離縁し、復讐を決意。
新之丞が庭でやみくもに木刀を振る姿、迫力がありました。
師匠と稽古するシーン、そして決闘場面、
どれも美しい動きでした。
もっともっと立ち回りを見たかったな。

いい映画でした。
穏やかにすすむ物語なのに、惹きつけられる。
エンド・クレジットのバックに新之丞の家の全景が映し出され、
ほのかな明かりのなかで、影が揺れる。人と人との温かい暮らし。
この余韻のある映像を観ても、とても心配りされているのを感じます。


木村拓哉、檀れい、笹野高史さん、
三村家の三人は素晴らしいキャスティング。
木村拓哉の目の力がいかんなく発揮されてました。
スクリーンだとずいぶん若く見える。
失明し、復讐を誓ったあたりから
絶望に満ちた暗い表情に変わっていく。

檀れいさん、かわいらしかった。綺麗な目、綺麗な声。
笹野高史さん、飄々として愛すべき中間。
敵役の板東美津五郎、憎たらしかったです。
変なところから斬りかかってきてとことん卑怯なヤツ。
それでも武士として、幕を引きました。
桃井かおり、おせっかいおばさん、騒々しくていいですね。
緒方拳、この方の殺陣ははじめて見た。凄みがあります。
そうだった新国劇の方でした。

今、こんなふうに隅々まで行き届いた時代劇映画を
作れる監督は他にいるのかな。

高校生の頃、山田洋次監督を、「寅さん」ばかり作っている
大したことない人だと思っていました。
「寅さん映画」をバカにしていたところがありました。

私の通っていた高校では、雨で行事がつぶれると、
体育館で映画鑑賞になります。
そこではじめて寅さんを観ました。
ふだんは拗ねている高校生たちが素で大爆笑。
観もしないでつまらないと決めつけていた私がバカだった。
役者、スタッフともども、職人でした。
気持ちのこもった映画でした。
定期的に「寅さんシリーズ」をつくることが、どれほどすごい事なのか
本当に理解したのは、大人になってからです。

冷静に書くのはこのあたりまで^^;
あとは木村拓哉ファンとしてつらつらと

木村拓哉は嬉々としてプロモーションしてましたね。
きっとやりとげた事に満足して、
誇らしい気持ちでいっぱいなのでしょう。
見ているわたしも何だか嬉しい。
山田洋次監督、木村拓哉をこの映画の主役にしてくれて
ありがとうという気持ちです。
(どんだけファンなんだ^^;)
監督はこの映画の主人公は
目が美しくなければいけないと言います。
だからこそ木村拓哉を主役として迎えたと。
スクリーンでの彼の目はひときわ魅力的でした。

キムタクファンなわりには、ドラマはあまり見ていません。
「GOOG LUCK」「プライド」はギブアップ。
「エンジン」もたまに見る程度。
だって、あまりにもキムタクなんだもの。
なにあの脚本、あのセリフ。
「眠れる森」「ビューティフルライフ」「HERO」は好きだった。

代表作ができてよかった。
演技力が評価されている草彅くん、
三谷幸喜から絶賛され大河の主役を務めた香取くん、
比べる必要はないけれど、SMAPのメンバーは強者揃いです。
視聴率男と呼ばれていても、
木村拓哉の称号がそれだけなのはおかしい。

来年早々から『華麗なる一族』がはじまります。
硬派なドラマは、…苦手^^;
でも、やっぱり気になる。



客席は年輩の方が多かった。
わたしは戦争映画、時代劇はほとんど観ないので、
これだけ年齢層の高い方たちと一緒に
映画を観ることはめったにありません。
後ろの席に幼児がいて、飽きちゃって騒ぐかな
と思っていたら静かにしていました。
大きな声で解説していたのは、70代の男性
映画館とTVのあるリビングを混同しているかのようでした。
びっくり。
若い方からこういった被害を受けたことは一度もないのにな…


タグ:SMAP
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コメント 7

キムタクというブランドの殻を思い切り裏切る形でやぶってほしいですね[ニコニコ] 
by (2006-12-16 22:49) 

miyuco

>松matsu先生
文章のヘンなところを直している間にコメントがはいってビックリ[目玉]
そうですよね~彼はそれができる力を持っている人なんだもの。
格好良く裏切って欲しいです[ラブラブハート]
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-12-16 23:00) 

流星☆彡

「寅さんシリーズ」←私は、高校時代とか若い頃に見た(TVで ですが…)時には
何が面白いか分からず、中年に なってから、突然(!?)面白く観るように なり
ました!どの作品も あっけない感じの幕引きで終わり、何かが解決した感じも
なく…。そのリアルな さりげなさを 面白く思うには、やっぱりenergy溢れる
10代の感性で感じ入るのは 無理かも…とか 思ったりしている今日・この頃。
^^; この作品も、あくまでも “山田洋次”作品なのだから、その世界観に
浸れないと、さりげなさを 物足りなく感じてしまう かも…ですね。
『華麗なる一族』…私は 期待特大で 待っております♪『白い巨塔』と言い
山崎豊子さんの原作は、時代の波を超えても 古びない力で迫ってきますから、
これで また キムタクの新たな魅力に迫ってくれるのかな !?…na~nte
思って♪昭和30年代の街並みのCG映像も ちらっと見ましたが、『ALWAYS
三丁目の夕日』に迫るような映像でしたよ☆我ら世代には、この点↑も 大いに
惹きつけられる要点ですよネ[ラブラブハート]
いっぱい書いたのに、いまいち キムタクを褒めそびれてる?!(^_^;)ゞ
by 流星☆彡 (2006-12-17 19:37) 

miyuco

>流星☆彡
『武士の一分』にTVのキムタクを望む方には地味な映画だという
印象が残るかもしれません。でも山田組のチームの一員として、
役者としての木村拓哉として見ると、とてもいい仕事ぶりだったと思います。
何より、木村拓哉本人が誇らしげにしているところがしみじみよかった[ラブラブハート]
映画の出来がよくなかったらどうしようと、桃井かおりじゃないけれど
親戚のおばちゃんのような気持ちで観にいきました^^;
出来映えにはとても満足でございます☆
『華麗なる一族』むか~しTVでやっていましたよね。
当時は少しだけ見て、パスしちゃった[汗汗]
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-12-18 16:27) 

miyuco

流星☆彡さ~ん、呼び捨てしちゃった(><。)。。
ごめんなさい!
by miyuco (2006-12-19 13:35) 

私は特別にキムタクのファンではないけれど、彼の存在感、目力、カリスマ性、そして何でもこなす器用さには感心してしまいます。
ただ、彼のドラマは「HERO」と「GOOD LUCK!」は好きですが、後はあまり観ないのです。やはり彼の味が生かされていない気がして。
でも映画に出る、しかも盲目の武士の役、監督は山田洋次、と聞いて、とても観たくなりました(観る時間がないのですが)。
是非是非観たい。この記事を読んで、さらに観たくなりました。
by (2006-12-27 16:26) 

miyuco

>ミミ猫さん
とてもいい映画でした。ぜひぜひご覧ください[!!]
制作者側がキムタクブランドに尻込みしてドラマをつくっているように
感じることがあります。もっと違う面を上手に出すことはできないのかと
歯がゆく思います。大物タレントになっちゃったから難しいのかな。
本人は今のままの状況に甘んじるつもりはないようなのに。
nice!とコメントありがとうございました♪
(時間を作るのはたいへんですよね。)
by miyuco (2006-12-28 09:38) 

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