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『優しい音楽』 瀬尾まいこ [読書]

とてもとてもありえないシチュエーションを用意して、
心がじんわりと温かくなるような物語を紡ぎ出す。
瀬尾まいこさんの3つのお話。

表題作「優しい音楽」
存在だけを確かめていたい、ずっと一緒にいてほしい、
そんな気持ちから始まった。
でも、それだけでは不自然。がんばって恋人にならなければ。
なぜ千波がタケルに近づいてきたのかが明らかになります。
彼の存在は千波の家族をいやし、同時に傷つける。
彼はそれに気づいています。
そして、一歩踏みだした彼の行動が、
予期せぬかたちで千波一家を喜ばせ、
彼らの関係は新しいものに変わっていきます。
過去に近づき、受け入れようとしたやさしい行為が、
鮮やかに今を照らし出し、いままでとは違う何かが始まります。
演奏されたクラプトンの「ティアーズ・イン・ヘブン」は
不慮の事故で亡くなった息子へあてた曲でしたね。

「タイムラグ」
都合の良い女は、思いがけず、なりゆきで、
またもや男の利益になることをしてしまいました。
男のためではなく、男の子供のためにやったことだけど。
「目の前に起こった出来事を順番に片付けていくことしかできない。」
と男のことを形容するけれど、似たもの同士なのかもしれない。
利害関係を抜きにして、不倫相手の妻と子供をかばう発言をする深雪。
正しくて好きだな。
相手の家族の事情をここまで知ってしまったら、
いままで通りの不倫関係ではいられない。
平太と深雪はこれからどうなるのでしょうか。

「がらくた効果」
これも奇妙な物語。おじさんを拾ってきてしまうなんて^^;
はな子が拾ってきたおじさんを受け入れる同居中の章太郎も、ヘン。
人と人とが出会って化学反応を起こし、
それぞれが新しい何かを手に入れる話。
おじさん効果(佐々木効果)と若い人効果(?)でハッピーエンド。

口当たりよく、さらさらっと読めるストーリーばかり。
若い頃は、軽い小説なんて何にも残んないじゃん、と
生意気にも思ってました。
でも、今はそうは思わない。
読みやすくて心に残る物語なら、
それはそれでいいんじゃないと思ってます。
時間のない忙しい人たちのためにも。

優しい音楽

優しい音楽

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 単行本


タグ:瀬尾まいこ
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