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『イリアム』 ダン・シモンズ (感想その2) [読書・海外]

『イリアム』は3つのパートで構成される。(あとがき引用)

☆イリアム 紀元前12世紀頃
 ― トロイア戦争における、人間の軍勢と神々入り乱れての合戦譚

☆地球 いまから数千年後
 ― 未来の地球で飼い殺しにされている旧人類の、真理探究の物語

☆火星 いまから数千年後
 ―火星の量子攪乱を調査しにきた、木星系半生物機械の冒険物語。

異なる場所での(時間軸はどうなんだろう?)ストーリーが進行し
それがある一点でクロスする。その瞬間の高揚感!
長い物語を読む醍醐味がここにあります。

火星の急激なテラフォーミング過剰な量子活動を
推し進めているのは何者なのか。
過去500年、モラヴェックとは交流がとだえ
消息不明のポスト・ヒューマンなのか。
太陽系全体に脅威をおよぼすほどの異常な量子攪乱への対処。
これが火星探検隊の目的。
火星周回軌道から観察すると量子移送ラインは
すべて大火山オリュンポス・モンスに集中している。
神々は‘どこか’へ出かけていき‘どこかよそ’からやってくる。
濫用がすぎて危険レベルを超えている。

‘どこか’が明らかになるのは、
宇宙船が持ち込んだ装置が発動してから。
う~ん、そういうことだったのか…
でもそれはLMGが言うところの
「ここから見える夜空の星ではなく、異なる地球」?

白状すると、トロイア戦争の部分は流し読みしてしまった。
神々がこの戦争を観察させるために
ナノテクで再生したホッケンベリー。
二十世紀後半に生き、トロイア戦争に関する書物を著した大学教授。
その著作はすべてがひとつのことば「メーニン」すなわち怒りに
関するものだったとアフロディテは言う。
そして<シンプレックス>に組み込まれている。(組み込まれた理由は?)
それゆえに再生対象となり、
彼のDNAはナノ細胞による爆裂を免除されている。
(…この著作は何かの伏線になるのかな?)
ホッケンベリーの動きによりトロイア戦争が
ホメロスの叙事詩「イリアス」とは別の流れに変わっていく。

地球パートは謎だらけ。
ここでのお楽しみは小太りで女たらしのディーマンの転身。
ヘタレの軟弱男、骨の髄までイーロイだったのに、
リングでの大活躍、かっこいいではないですか!
「このろくでもない都市を、まるごと破壊するんだ」

人類の遺伝子にプログラミングされている戦う本能が目覚める。
オデュッセウスがトリノの聖布を使って啓蒙したかったこともこれかな。
迫りくる戦にそなえて、のんきな古典的人類に戦のなんたるかを教える。
トロイア戦争を見せてそこに登場する人物の姿を知らせておくってことは
やっぱり火星パートとからんでくるのかな?

「さまよえるユダヤ人」サヴィによってことごとく覆る現状認識。
コマが次々とひっくり返るのが小気味いいです。おもしろい!
(saviはもう登場しないのかな…もしかするとまた会えるかも?)

地球には軌道リングがあり、そこにはポストヒューマンがいる。
「天で交差してゆっくりと回転する二本の軌道リング」
ファックスノードがあり、ひとびとはその間を瞬時に移動できる。
(どこでもドア)
生存する人間はきっかり百万年。寿命はきっかり百年。
仕事も学問もせず、衣食住のあらゆることを
自動機械の「下僕(しもべ)」たちに任せ、
享楽的に暮らしている人類。
五つの二十年という寿命が終わると軌道リングに昇天し
ポストヒューマンに生まれ変わり、安楽で不死の生活を送れる。
遺伝子操作されていて細胞やら身体各部に
ナノマシンが組み込まれている自分たちが
「古典的人類」であると信じている。
(プロスペローは「改良型人類」と言っていた)

はっきりとは説明されない言葉がたくさん出てくる。
「ルビコン禍」<万死病>で生き残ったのはユダヤ人のみ。
ユダヤ人だけが「ルビコン・ウイルス」への耐性を持っていた。
(…このウイルスはなんなんだろう?)
生き残った9113人の古典的人類は「最後のファックス」で
ニュートリノ流に送られて戻ってこなかった。
地上に残ったのはサヴィひとり。サヴィいわく、これは人類皆殺し。
実はポスト・ヒューマンの策略で
青い光の柱にコード化されて保存されている。
閉じこめられてしまっている彼らの解放をディーマンは画策する。
スリムになったディーマン大兄(ウール)の活躍に期待。
死臭漂う軌道リングを破壊した君にならできる!(たぶん…)
さてどうなることやら。

オデュッセウスが予言しているように戦いは迫っているのか。
古典的人類が戦う相手は誰なのか?

火星の神々に戦いを仕掛けるひとびとと小惑星(ベルト)モラヴェック。
こちらも「to be continued.」

いろいろな謎が散りばめられている。
ヴォイニックス
「最後のファックス」の二世紀前、突然時間歪曲雲から出現した。
赤錆た鉄の塊だったのが「最後のファックス」のまぎわから急に活動し始めた。
ポスト・ヒューマンのあずかり知らぬ彼らなりの目的があるらしい。

最大の謎はポスト・ヒューマン。

…長くなるので、つづくにします。

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『イリアム』 ダン・シモンズ (感想その3)


 『イリアム』 ダン・シモンズ (感想その1)


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