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『RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠』 柴田よしき [読書]

1995年横溝正史賞受賞作品。
出版された直後に読みましたので今回は再読です。
激しい感情に身を任せるという状況とは無縁の
ローテンションな日々を送っている人間なので
この作品の主人公「緑子(リコ)」に感情移入するのは難しい。
性的に奔放なところは特に…
それでも彼女のくやしさや絶対に許さないという気持ちは理解できます。
ただし、ミステリーとして楽しみたい私には
「緑子」のモノローグがちょっと重たかった。

「緑子」の公私ともにパートナーである刑事が殺される。
その直前に糸口をつかんだというメッセージを残していた。
それは一体何なのか。捜査はなかなか進展しない。
そして思いがけない展開をみせていく。
ぐいぐいと読まされてしまいます。


*
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男の嫉妬は女より手に負えないのかもしれない。
男性中心の警察組織の中で「緑子」は蹂躙される。
「女」というだけで憎まれ蔑まれる。
でも、結果的に「緑子」を最も憎悪していたのは女だったわけです。
愛情と憎悪の入り交じった激しい感情。
作者の一筋縄ではいかない力を感じました。



男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。
その中で、女であることを主張し放埓に生きる女性刑事・村上緑子
彼女のチームが押収した裏ビデオには、
男が男に犯され殺されていく残虐なレイプが録画されていた。

「緑子」が女でもレイプはできると言って挑んでいく。
「目には目を」という事ですね。
自分は対等な「人間」なのだとわからせるために。
そういう荒療治でしか通じない相手だというのはわかる。
でも、それは「男」がしている事をなぞっているだけのような気がする。
「男」に対抗するために「男」と同じ憎むべき方法を使うのはむなしい。

桐野夏生「顔に降りかかる雨」が1993年に江戸川乱歩賞を受賞していて
強くありたい女が自分が女であることを引き受けて闘う物語を
「RICO~」と続けて読んだ覚えがあります。
その時点では桐野夏生のほうが好みで「ミロ」シリーズは好きでした。
今の桐野夏生はちょっと苦手

 

RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)

RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)

  • 作者: 柴田 よしき
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 文庫
この作品に「山内練」は出てこない
緑子シリーズ第二弾「聖母(マドンナ)の深き淵」に初登場するようです。

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