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『聖母(マドンナ)の深き淵』 柴田よしき [読書]

おもしろかったです。
別々に発生した殺人事件が絡み合っていき
最後に未解決だった過去の事件の真相にたどりつく。
でも、少し偶然が多すぎるかな。

「山内練」と「麻生龍太郎」がこの作品で初めて登場する。
麻生は1年前に警察を辞めて探偵事務所を開いている。
捜査一課で最も優秀な刑事と呼ばれ
いずれノンキャリアの星になるだろうと言われていた男が
今では場末の崩れかけた雑居ビルで私立探偵をしている。
「あなたは清潔すぎる。どこまでも、人格が気高すぎるのよ。」
と緑子は麻生に言う。

緑子が決して忘れられない「彼女」が好きだった地下の店。
七十年代から八十年代のロックばかり流れる
新宿の隅っこに残る店。
そこで「山内練」と出会う。
すでに二人は面識があり山内の噂は緑子の耳に入っている。
ここ数年来にデビューしたヤクザの中ではピカ一の極悪な男。
真性のゲイ。金儲けがうまい。
どんな気まぐれなのかあるいは緑子を気に入ったのか
その店で山内は緑子の話し相手になり
誰にも話したことがない身の上話をはじめる。
しかし二人の関係が和やかに終わるはずがなく
別れぎわに緑子の名前を聞いた途端、
山内の表情は一変する。
緑子は山内の冷酷さを身をもって知ることになる。



一児の母となり、下町の所轄署で
穏やかに過ごす緑子の前に現れた
親友の捜索を頼む男の体と女の心を持つ美女。
保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。
関連の見えない事件に隠された一つの真実。
シリーズ第二弾。

辰巳署勤務の緑子が新宿と関わらざるを得なくなったのは
ふとしたきっかけで人捜しを頼まれたから。
失踪した女は新宿で覚醒剤常習の売春婦になっていた。
辰巳署の管轄で主婦が惨殺される事件が発生。
思いも寄らない形でふたつの事件は
過去の乳児誘拐事件と繋がっていく。
「罪ではあるが罰することができない」
見えない牢獄から抜け出せない女が選ぶのは
破滅しかなかった。
育児に追いつめられる気持ちは身にしみてよくわかるので
腹をたてながら読んでました。助けを求められなかった母親に、
小さい命と母親を救えなかった周りの無理解な人間たちに。

麻生は警察を辞めた理由をこう言います。
ある人に出会って惚れてしまった。
とにかく俺はその人に夢中で、
他のことはもうどうでもよくなった。
麻生龍太郎…恋に生きる44歳。
その相手があの人だとはね。

「彼にはたまらない魅力があるでしょう?
あの無鉄砲さ、無防備さ、
それに何より、どこか人生を
投げてしまっているような空虚な感じ。
ああいう不安定で危険で、それでいて頼りなげなものに
惹きつけられる人間というのがいるもんなんです、
どんな世界にもね。」
弁護士の高安晴臣はこんなふうに山内のことを語る。
あ~早く「聖なる黒夜」を読みたい!
でもシリーズ最終作『月神(ダイアナ)の浅き夢』から読みます。

 

聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)

聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)

  • 作者: 柴田 よしき
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 文庫


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