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『月神(ダイアナ)の浅き夢』 柴田よしき [読書]

緑子(りこ)シリーズ三作目
やっぱりおもしろい。最後までハラハラしました。
ラストがまたいいんですわ。

裏主人公(個人的見解^^;)の山内練と麻生は
今回も強く印象に残ります。

安藤と息子達彦と3人で平穏に暮らすことを望み
警察を辞めようと緑子は考えている。

だが、本庁にいるかつての上司高須義久に要請され
連続警察官殺害死体遺棄事件の合同本部に加わることとなる。

若く独身の美男子の刑事ばかりを
狙ったらしい猟奇殺人事件の被害者はすでに5人。
残虐にも、手足、性器を切り取られ
木に吊された刑事たち。
捜査は行き詰まっている。

緑子は新宿署からきている元同僚の坂上と組み
四番目の犠牲者、蓼科昌宏の事件当日の足取りを追う。

緑子の女性ならではの細かい観察力で新たな情報が手に入る。
蓼科はアイドルタレント「山崎留菜」のファンクラブに入会していた。
後の調査で5人の被害者のうち3人が会員だったと判明。
これが事件解決への突破口となるのだろうか。

「グラシア」という謎の言葉が意味するところは何なのか

 

山崎留菜のファンクラブが事件と関係しているとわかっていながら
その名簿を実質的に管理している人間を調べなかったのは
失態だと作中にも書かれているけれど、
不自然すぎるでしょう。ありえない。
イースト興業との繋がりまでつかんでいるのに。

「彼は天才なの。彼に出来ないことなど、何もないのよ。」

こんなにうっとりとした言葉を聞けば、
山内練が思い浮かぶはずなのに。
(個人的見解すぎる?)

真相が明らかになってみれば犯人の境遇はあまりにも哀れ。
事件の根っこには誤認逮捕から発生した悲劇があった。
その事件の指揮をとっていたのは安藤であり高須も関わっていた。
そして真相にたどり着く証拠を見つけたのは麻生だった。

被疑者を一ヶ月近くも拘留し責め立てて自殺に追い込み、
後に真犯人が判明するという最悪の事態。
自殺は警察だけの責任ではない、
と言う安藤の言葉に緑子はうなずくことができない。
警察の責任であり陣頭指揮をとっていた安藤の責任だと緑子は言う。
仕方のないことだったで片づけてしまうことは出来ない。

自分も同じことを山内練にしたのだと麻生は思っている。
無罪を訴えていて聞き入れられず
練の運命は大きく変わってしまった。

「再審請求」させようと麻生は考えている。
時を巻き戻すことはできないが
麻生は練に今とは違う生き方をして欲しいと願っている。

「一度始めると破壊行動をやめられない。
そしてその反動で、自分自身の精神もボロボロになる。
他人が壊れて行くのを見て自分も壊れて行くんだ。」
そんな練を救いたいと。

「麻生は若の為なら人殺しだってする。
そんな人間が、どうして若を更正なんかさせられる?
毒をもって毒を制すことはできても、毒を清めることはできない。
麻生はもう負けてるんだよ…若の毒に。」
練の側近、斉藤はこんなふうに言う。

その役目は緑子なら果たすことができるのでしょうか。
緑子は警察をやめない。
ラストシーンの二人の様子で、
これからどうなるのかいろいろと想像できます。

緑子は自分でもわかっているように、どこか壊れている。
「泣いている男の人を見ていると…その人が欲しくなるの」
なんて言いながら麻生とまでそういう関係になるところがなんというか…
壊れた人間だけれど潔癖で、
だからこそ麻生と練の間に入っていけるのかもしれない。

緑子を助けたグラシア。
グラシアを胸に彫っている男はあまりに魅力的です。

三作読んで、緑子がなぜ安藤に惹かれたのかが最大の謎だった。
どこがいいのか私にはさっぱりわかりません[爆弾]


 

月神(ダイアナ)の浅き夢 (角川文庫)

月神(ダイアナ)の浅き夢 (角川文庫)

  • 作者: 柴田 よしき
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 文庫


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