『見上げてごらん』 岩館真理子

北海道にいる家族と離れ東京でひとり暮らしを始めた千里子。家族や友人たち、そして気になる男の子・高島の存在に支えられながら成長していく…。ほのぼの＆ユーモラスな岩館ワールド満載の１冊。






かわいい物語です。
主人公の女の子、羽遠千里子は女子大生。
東京でのひとり暮らしは
「逃げて帰りたいことばっかり」だった。
でも仲のいい友だちができ、
のっぽの男の子も気になりはじめた。
北海道を出て４つの季節が過ぎていったいま、
物語はゆっくりと動きはじめる。

娘を心配してたくさんの手紙を書く
筆まめのお父さんがすてきです。
千里子がちびっこなのはお父さん譲り。

「小っちゃいからって　地面ばっかり　見てんじゃねーぞ
東京の空とこっちの空は　ずーっとつながってんだからな
時々　空を見上げて　おれたちのことも　思い出せよ」

見上げたら、そこにあるのは空だけだったのに
今では、のっぽの高島くんの姿も見えるようになる
二人の距離がだんだん近くなっていく、そんな物語。

ハチクロのはぐちゃんを思い起こすような千里子だけど
「特別な才能」も花本先生という後ろ盾もない普通の女の子。
一生懸命さがとても健気でかわいい。
心配かけまいとしてがんばって、その結果
さらに心配かけるような状況になってしまったり。

「わたしは高島さんやみんなの中で
小さくて消えそうな星だ
いつもそう思っている
だから逃げだしたいのかも
自分が傷付かない場所に」


そうではないよと男の子はやわらかく見守りながら
そっと待っている。






「羽遠」という名字をハートさんと呼ぶのがいいな。

のっぽの高島くんとおちびの千里子は過去に接点がありました。
北海道の大学病院で出会っていたのです。
「ロミエット」のオーナー、アカネさんも
そのとき病院に入院していたのですが
それを把握しているのはアカネさんだけという
ひねりのきいた設定になってます。

千里子は当時のあのふたりの男の子が
高島くんとアカネさんだと気づかない。
高島くんは千里子には気づいているけれど
アカネさんには気づかない。
高島くんと千里子の初恋の相手は
当時のアカネさんであり
アカネさんの初恋の相手は…

千里子の家族や高島くんの家族、「ロミエット」
わんこの「じゅりお」くんや猫のエピソードも大好きです。
ゆっくりしたテンポの温かいストーリーでした。

岩館真理子の作品を読んだのは本当に久しぶり。
岩館さんが連載していたのは週刊マーガレットだったので
週マを買っていた頃の初期の作品しか読んでいません。
主に活躍していた８０年代は
もう少女マンガから離れてしまっていたので
代表作といわれるものは読んでいないと思う。
ちょっとひねた女の子が魅力的だという印象があります。
「見上げてごらん」でちょっとひねてるのはアカネさんかな＾＾

「えんじぇる」だけは読んでいて好きでした。
さすがに絵柄は変わっていますが
いまでも現役でこういうストーリーが描けるなんて
すてきだなと思います。なんだか嬉しいです。

コメント 2

私も少女マンガに熱中していたのは主に70年代です。
（ということは、同世代でしょうか？＾＾）
毎週欠かさず週刊マーガレットを読んでいました。
その中で、いちばんお気に入りだったのが岩館真理子です！
授業中にこっそりコミックスを読んでいて涙したことも・・・（＾＾；
ただ、絵がすっかり垢抜けた80年代以降はあまり読んでいません。
最後に読んだのは「遠い星をかぞえて」あたりかな？
　＞ちょっとひねた女の子が魅力的
同感です！　そこが好きなんですよねv
最近はコミックスの売場に行くこともあまりないのですが、
「見上げてごらん」、読んでみたくなりました。
by チヨロギ (2008-04-12 14:37) 

＞チヨロギさん
たぶん同年代だと思います＾＾
三谷幸喜より学年がひとつ上でございます。
岩館さんの絵柄は全盛期のような美しさとはいきませんが
それでもやっぱりすてきなストーリーでした。

萩尾望都『ウは宇宙船のウ』読んでます＾＾
ブラッドベリの名前を知ったのは萩尾さんのエッセイでした。
「霧笛」の底知れぬ寂寥感はいまでも心に残っています。
あれは忘れられないです。
nice!とコメントありがとうございました♪

by miyuco (2008-04-13 10:16)