『ヒー・ヒズ・ヒム』 大島弓子

いちごがたくさん店頭に並んでいると思い出す。
大好きな「ラッカー行進曲」
ピーター・ピンクコートのこの歌は
大島弓子『ヒー・ヒズ・ヒム』に出てきます。

[ピーター・ピンクコート]

イギリスのシンガー

ふさふさのまき毛

紺碧の目

あたかも尾となりとびそうな足

高い声


「ボクは今朝　１７歳になったので　前髪をわけてみた」

髪型を変えてみたら、
みんなの自分を見る目がちがっている。
だってそこに現れたのは「ピーター・ピンクコート」だから。
もはや「冬彦」ではないのです。

ピンクコートとして振る舞えば「笑顔の君」とも
普通に会話できる。
「いつもみかけるたびに　笑ってた
だからかってに　「笑顔の君」とつけた」

「笑顔の君」は「ラッカー行進曲」がかなしい歌だと言う。

―　ラッカー行進曲　―



今日の苺はラッカのかおり

今日の苺はラッカのかおり

シェラック　ラッカラッカ

シェラック　ラッカラッカ

アーサーラッカムラッカはぬらぬ

苺にぬらぬ

だけど今日はラッカのかおり

いまやイチゴはすごいかがやき

ひとくちかじればWA…O…O…O…N

WAOOOON

WAOOOON

シェラックラッカラッカ

シェラックラッカラッカ

（くりかえし）

苺をたべてみてそれからビスケットをたべ、
また苺をたべる。
そうすると二度目の苺の味はすこし変わる。
だから「ラッカー行進曲」は
かなしい曲だと「笑顔の君」は言います。

彼女には好きなひとがいた。
冬彦のピンクコートを見るたびに勇気をたくわえて
いつか彼を追いかけることができるかもしれない。
冬彦はせつなくなるばかり…

彼女が見ているのは
「ピンクコートフィルターのかかった冬彦」
冬彦とは違う。
ビスケのあとの「すごいかがやき」のイチゴのように。


冬彦は和製ピンクコートを葬ろうとします。
ときを同じくしてイギリスのピンクコートも姿を消す。
ふたりはどこかでつながっていたのかもしれない。
魂が同じだったのかもしれない。

冬彦は「笑顔の君」からすてきな言葉をもらいます。
「あなたはほんとのピンクコートよりピンクコートだったわ」

大島弓子さんがデヴィッド・ボウイのファンであることは有名です。
それを知っているのでボウイの姿が
ピンクコートにオーバーラップします。
ふたりとも１９４７年生まれ、同い年のようですよ。

弟がピンクコートに似ていることに気づいた姉が
それまでの弟に対する態度を一変させるところが大好き＾＾
もう笑ってしまう。
「ピーター　バラです」
ミーハーな私にはその気持ちがよくわかるのでした。



クリックすると大きくなります。
いつもながら余韻を残す素晴らしいラストシーン。

*
*
*

ある時、学校から帰ってきた我が家の次男の
雰囲気が朝とは違っていた。
よく見たら髪型がかっこよくなり
眉毛もきれいに整えられていた。
どうも手先の器用な先輩が
おもしろがって後輩たちを変身させたらしい。
めったにない機会なので
記念に写真を撮っておきました＾＾

変身した息子の記念写真を撮ったのはもうひとり
天パをストレートにセットされた男の子の母。
部活内でヘンなハハふたりと認定されてしまいましたわ＾＾；

ピンクコートになっていたら嬉しかったのにな


映画「グーグーだって猫である」の予告編が
youtubeにあがってました。



グーグーかわいい！
挿入歌はハミングキッチン「パノラマの丘」
（たぶん…＾＾；）

 

タグ：大島弓子

コメント 8

ピンクコートのフィルターがかかった冬彦は、ビスケットを食べた後に食べるイチゴのようなもの・・・。
なるほど。いつもながらmiyuco さんの明察に感心しました。
この作品は、私もラスト2ページが秀逸だと思います。
今の桜が散る時期に読むと、さらに格別！
※　TBさせていただいてよろしいでしょうか？

ご子息の変身！　いやぁ、写真に撮るのはアリでしょう！
うちの子も、誰か変身させてくれないかしら・・・。（笑）
あっ、土台が土台なので、ピンクコートはもちろん無理ですが・・・。（＾＾；

☆　『グーグーだって猫である』・・・もう予告篇が出ているのですね。
冒頭のナレーション「天才漫画家」というのは、ちょっと大島さんも気恥ずかしかろうと思います。
でも、グーグー、本当にかわいい。
紙袋と子猫というのは、禁じ手ですわね。
by びっけ (2008-04-09 08:49) 

＞ぴっけさん
はらはら落ちる桜の花びらのもとで眠るピンクコート
表情がなんともいえず絶品ですよね。
この時期の大島さんの絵柄は神々しいです。
「綿の国星」のラフィエルのアップとか。
こちらからもＴＢさせてくださいませ。

グーグーの予告篇の「天才漫画家」には
ファンであるわたしもこそばゆい感じがしました＾＾；
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2008-04-09 17:19) 

miyucoさん、こんばんは。
『シンジラレネーション』（朝日ソノラマ 1982）のカヴァには
「ヒーヒズヒム」のカラー表紙が使われています。

突然ですが、ここでユーミンおたくにクイズを出題！──
「ヒーヒズヒム」と「ヒー・ヒズ・ヒム」の違いが分かりますか？
「ヒーヒズヒム」はモノクロ表紙なので１コマ目は右ページ。

《ピーター・ピンクコート!! / 現代の妖精!! / 現代のスーパースター!!
‥‥に / 日本の冬彦君は / 少し似て生まれてきたのでした》
というキャプション入りの「ヒー・ヒズ・ヒム」は、
カラー表紙なので裏ページがない！‥‥つまり左ページから始まる。

「ヒーヒズヒム」と「ヒー・ヒズ・ヒム」は左右のページが逆なんですよ。
身開きの１カット・シーンがないから出来る編集ですが、
見較べてみると２作品の印象は結構違います。
「ヒー・ヒズ・ヒム」のラスト２頁は見開きで終わるのだから‥‥。

「余韻を残す素晴らしいラストシーン」は「ヒーヒズヒム」、
「ラスト2ページが秀逸」なのは「ヒー・ヒズ・ヒム」じゃないかしら＾＾
「パスカルの群れ」と「パスカルの群」の違いは？
by sknys (2008-04-19 22:26) 

sknysさん、こんばんは。
「左右のページが逆」
それは知りませんでした＾＾；
確かに印象が変わってきますよね。
他の作品でもそういうことがあるのかしら？
全集があるからいいやと思って引っ越すときに
何冊かコミックスを処分してしまったんです。
今はとても後悔しています(v_v｡)
コメントありがとうございました。
またいろいろと教えてください！


by miyuco (2008-04-20 18:31) 

「大島弓子選集」のタイトル表記は「ヒー・ヒズ・ヒム」でしたね。
ファンサイトWhite-Fieldの「書籍リスト」を信用しちゃった。
ちゃんと確認してからコメントすべきでした（土下座）。

お詫びを込めて、画像をUPしました＾＾;
（http://sknys.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_fc3/sknys/He-his-him.jpg）

右が「プチコミック・大島弓子の世界 Part2」（小学館 1978）に
再録された「ヒー・ヒズ・ヒム」、
左は「ヒーヒズヒム」が収録されている『シンジラレネーション』です。
初出（週マ）の「ヒー・ヒズ・ヒム」はカラー表紙で、
その裏は広告だったはず‥‥。

「プチコミ」収録の「草冠の姫」は表紙を含めて巻頭カラー８頁！
‥‥雑誌掲載時のカラーページを全てそのまま再現した
「大島弓子パーフェクトセレクション」が出ないかなぁ＾＾
by sknys (2008-04-22 20:35) 

sknysさん、ありがとうございます。
「プチコミック・大島弓子の世界」大事に持ってました＾＾
実家に置きっぱなしにしていたら
例のごとく焚書の憂き目にあってしまったけど(v_v｡)
カラーページ再現してほしいですよね！


by miyuco (2008-04-23 16:08) 

きっと今の時期がイチゴは最安値。こないだ小粒だったけどカナリ綺麗なのが１パック200円で狂喜乱舞しちゃいました。
苺はビスケットと交互に食べるよりクリームチーズと代わり番子に食べたり大福と一緒に食べたりするのが好き。一等すきなのは苺ミルクだけど。
でもラッカは塗らない(笑)アーサー･ラッカムの絵が好きだからではなく(彼の絵は少し暗くてチョット怖い)

スニ氏の相変わらずの蘊蓄振りには感心しきり。
スゥ。には雑誌で見た記憶があるのだけど78年なら週マは買ってなかったからプチコミックかなぁ？
和製ピンクコートを辞めてもお姉さんにだけは見せてあげる優しい冬彦ｸﾝが好きです。


…you tube見たいなー(TT)実はワハハ動画(!)というサービスでニコ動もyoutubeも携帯電話用に変換可能だと知りまして 「ヤッター」とマシオカばりに喜んで登録しました。で早速DL。
ところが…これが…
１分30秒ほどの動画をDLするのに10分割…
手間と時間の掛かるったらない。
しかも当然ながら連続視聴は不可能…orz

ワハハ動画サービス自体は頑張ってるんだと思うけど実用度から云ったらコレは厳しい…厳し過ぎます。

グーグーの予告編…見たいよぅ(;_;)
by おきざりスゥ。 (2008-04-25 12:16) 

＞スゥ。さん
苺、２００円は破格の安さですわ！
私は苺にどっさりサトウをかけてミルクもいれて食べます。
すっぱいのは苦手なのでした＾＾；
ケータイからｙｏｕｔｕｂｅみるのは難しいんですね。
ドコモの新しい機種は対応しているみたいですけど…
グーグー予告編、細野晴臣さんの音楽も素敵ですので
ネカフェに行く機会があったらぜひ！
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2008-04-25 18:34)