『アフタースクール』

じんわりと温かい気持ちになりました。
同級生っていいね！
エンドロールが流れた後、
左手に指輪をはめた幸せそうな美紀の姿が映し出される。
よかった。どうぞお幸せに！

見終わった直後は不完全燃焼感は微塵もなく
なんとなく理解している気分だったのに
もう一度よく考えてみたら混乱してきた…
もう頭のなか、こんがらがってぐちゃぐちゃ(v_v｡)
落ち着いてよく考えよう、自分。

「甘く見てるとダマされちゃいますよ」
宣伝コピーがこれだから前知識なしで観にいきました。
どう考えてもダマされないのは不可能です。
だから深読みしすぎないで気楽に楽しんだ方が勝ちだと思う。

登場人物
母校の中学で働く教師、神野（大泉洋）
幼なじみのエリートサラリーマン、木村（堺雅人）
かつての同級生だと名乗る探偵（佐々木蔵之介）
探偵は木村を探していた。
神野は心ならずも木村探しに巻き込まれる。

前半は探偵の視点で語られていく。
監督いわく「世の中の色んなものを見てきた目をしている」
佐々木蔵之介のうさんくささがいいですね。
勝ち誇ったような眼、怯えている眼、吸引力があります。
妻を大切に思っているとしか見えない木村が
別の女と一緒のところを写真に撮られ連絡を絶っているのはなぜなのか
女はやくざと関わりがあるようだが木村はどうなのか
観客も探偵と神野とともに謎を追っていきます。
木村は神野が思っているような人間ではないのか？

大泉洋はお人よしで世間の裏をあまり知らないという
【探偵が考える】神野にぴったりです。
だからこそ、自分はガッコのセンセなんかより世間慣れしていると
いきがる探偵がいっぱい食わされたとわかったとき
観客の感じるカタルシスが増幅される。
（神野をこばかにしている探偵の視点と
見ている私たちも同化しているところがあるから）

一流企業のサラリーマンという地位が
どうにかなってしまうかもしれないのに
あまり深く考えてないような
ひょうひょうとしている木村に堺雅人はぴったりでした。
テキトーな男だよね＾＾

借金に首根っこを押さえられている人間がふたり登場する。
しかし二人はまったく違った方向へと向かっていく。
神野が最後に探偵に言った言葉は至極まっとうであります。


話が進むとついていくのがやっとで
理解するまでいかなかったような＾＾；
パンフレットにシナリオがのっていますが
読んでみてもどうにもモヤモヤ感が残る。
「スッキリ」をめざして、以下、整理整頓教室いきます。
映画の核心に触れますのでどうぞご注意を

*
*
*

いろいろと検討してみようかと思う次第でございます。

*
*
*

「指輪」のあつかいが楽しかった。
神野がケースにはいった指輪を車の中で見ているとき
観客は女と会っている木村が自分の結婚指輪を外したものだと考える。
しかし実際には…
これがどういうものかわかったとき、じんわりとした気持ちになります。
ちゃんと受け取ってもらえたことが最後にわかるし＾＾

警察は本丸の議員を逮捕する糸口をつかみたい。
あゆみはやくざから逃げたい。
同級生たちはあゆみを助けたい。
結果的にそれぞれの目的は成し遂げられたわけです。

警察が動いているのではないかという社長の懸念は
実はあたっていた。
写真の女が片岡の愛人だと探偵が思いこんだので
（神野に思いこまされたため）
社長もそれに引っ張られ、警察官ではないと判断する。
取引のことを知っている片岡の女が
内部の情報を探りやすい経理の男と共謀して
金を奪おうとしているのだろうと片岡は推測する。
社長もそれに同調する。

神野のＧＪは写真の女を確認したときに写真を見せずに
赤ちゃんを産んだばかりの美紀の写メをこっそり見せたこと。
片岡の愛人あゆみ＝美紀が真実なのに
探偵は（観客も）ずっとあゆみ＝写真の女だと思わされていた。

警察がタッチしているわけではないと判断したが
女と経理部の男が捕まらなかったため取引は中止。
捜査陣が現場を取り押さえるための準備がムダになっってしまった。
そこで木村が社長に連絡し、別の形で逮捕しようと画策するわけです。
（女が警察に絡んでないのならシロートの計画にすぎないと
社長は甘く考えてのこのことやって来たのでしょう）

やくざに「いい女」と言わしめるあゆみを
常盤貴子と田畑智子の容貌のギャップで
あれっと思わせるところがこれもまたキャスティングの妙だと思う。


物語が動きはじめた起点
それは木村が女と一緒に写っている一枚の写真
「たまたま」横浜にある本社の隣のホテルの前にいる木村を
同僚がケータイで撮ったもの。
同僚たちが喫煙室でそれをネタに
おもしろおかしくしゃべっているのを
「たまたま」近くにいた社長秘書が聞いていて写真を手に入れる。
高熱を出して休みをとっている経理部の人間が
本社の横のホテルに女といることが引っ掛かったらしい。

社長に写真をみせると木村をすぐに探せという話になる。
この時点では観客はなぜそんなに必死に探さなければならないのか
わからない。

後からわかったこと
社長はホテルで何回も見かけた女を警察ではないかと疑っていた。
ゆえに経理の木村が接触していることを怪しんで探している。
　　　　　↓
用心深い社長に女が何度も見とがめられていた「失態」が起点だった。


映画の冒頭のちょっとへんだなとひっかかった場面。
・「くつを買っておいたから」ってなんかとってつけたようで変。
　なにかありそう。
・神野の朝ご飯まで作ってあるって変な感じ。
・ベビーベッドの設置を手伝っている男がなんか変。
ひっかかったのは何故か、あとでわかりました＾＾

臨月の美紀が産気づいているのに木村に連絡がとれない。
出産が終わっても連絡がとれない。
　　　　　↓
そんな一大事の時に女と一緒の写真が出てくれば
わけありで木村が失踪したのかと観客は考える。

あとでわかったこと
ケータイを車の中に置いたままにしていたところ
駐禁でレッカー移動されてしまったので連絡がとれなかった。
木村はバタバタしている周りの状況をまったく知らず
計画をすすめていただけ。順調だと思っていた。

木村がのんきに神野の部屋でピザを食べているシーンには
あっけにとられたけど思わず笑ってしまった。
フツーにしてただけなんだけどね。

勘違いしたままあゆみだと思いこんでいる女を見つけ
それをネタに依頼主を脅すつもりなのに片岡に捕まってしまった探偵
そこに神野からメールがくる。
おびただしい血を流してたおれている女性の後ろ姿。
それを見た片岡は女性の衣装はあゆみのものだと確認する。

あゆみは梶山商事との取引のことを知っているので
経理の男と一緒にいるならば共謀して
大金をかすめ取ろうとしているのだと片岡は考えていた。
片岡に拉致される直前、探偵は木村のケータイの留守電をきいて
神野が木村の行動を知っていて知らないふりをしていたのに気づいている。
ふたりが組んで計画していたのが大金強奪だと探偵も考える。

ここで肝心なのが片岡は木村と一緒に写っている女の顔を見ていないこと。
（探偵があゆみだと思いこんでいる）女を見つけたと聞いただけ。
そして神野から送られてきたメールの倒れている後ろ姿の女を
衣装からあゆみだと判断したこと。ここでも顔を確認していない。
（顔を見られたらアウトだった）

あゆみが死んでしまったと片岡が認識したならば
もう探すことはないでしょう。美紀は逃げおおせることができる。

神野と美紀はしあわせになったようです。
木村くんは職を失ってしまって唯一ちょっと不幸かもしれない。
それでも初恋の相手の役に立てて本望なのかな。

おもしろかった！

こんなに頭を使ってプロットを追ったのは
恩田陸「ユージニア」を読んだとき以来ですわ＾＾；

コメント 13

はじめまして。
何回も映画をご覧になられたのでしょうか？
すごく細かに分析されていてびっくりです。
おかげで、僕自身の「？」だった部分が
いくつもスッキリしちゃいました（笑
by jedioki (2008-06-08 02:18) 

こんにちは。
ホントにmiyucoさんの解説にはホレボレしちゃいます。
すごい！＾＾。

この作品、すっかり騙されちゃいましたよーーー、甘く見てました。
by てくてく (2008-06-08 13:18) 

jediokiさん、こんにちは。
自己満足の長文におつきあいいただきまして
ありがとうございます。
パンフレットにシナリオがのっていたので
それを読んでから頭の中で再構築してよく考えてみました。
だって…なぜ社長は写真を見ただけで
あんなにも必死に木村を追いかけるのかという起点からして
きちんと納得できていないのにあいまいなまま
わかったつもりになっている自分に気づいてしまったから＾＾；
nice!とコメントありがとうござました。
by miyuco (2008-06-08 18:30) 

てくてくさん、こんにちは。
これを書くのに三日もかかってしまいました＾＾；
この倍以上の文章を書いてようやく納得できた部分を
まとめ直して記事にしたのにそれでも長文でした。
騙されるのも映画の楽しみのひとつですよね！
nice!とコメントありがとうござました。
by miyuco (2008-06-08 18:33) 

突然申し訳ありません。
先日アフタースクールのＤＶＤを見たのですが、
どうしてもわからない点があったので検索していたところ
miyucoさんの解説を拝見しました。
解説が素晴らしかったのでお答え頂けるかと思い
コメントさせて頂きました。

解説にもあるのですが、

＞神野のＧＪは写真の女を確認したときに写真を見せずに
＞赤ちゃんを産んだばかりの美紀の写メをこっそり見せたこと。
＞片岡の愛人あゆみ＝美紀が真実なのに
＞探偵は（観客も）ずっとあゆみ＝写真の女だと思わされていた。

ここでなぜ神野は赤ちゃんを産んだばかりの美紀の写メをこっそり見せたのでしょうか。
神野の立場とその場面までのストーリーを考えると
その必要がないように思えるのですが。
もしお分かりでしたら教えて頂きたいです。
ほんとすみません。
by tommy (2009-04-15 00:54) 

tommyさん、私でお役に立つかどうか＾＾；
＞神野のＧＪは写真の女を確認したときに写真を見せずに
＞赤ちゃんを産んだばかりの美紀の写メをこっそり見せたこと。
これは怪しげな個室でチアガール姿の女性に
写真を見せる場面ですよね。

木村と一緒にいるのがあゆみだと
探偵が思いこんでいるのならばその線で動いた方が
都合がいい。
あゆみでなければ誰なんだという事になり
万が一警察が動いていると知られてはまずいから。
そのためには写真の女があゆみだと
元同僚の女性には証言してもらわなければならない。
しかしチアガールは片岡の店で一緒に働いていたので
写真を見せればそれはあゆみではないと言うはず。

で、探偵の持ってきたツーショット写真ではなく
こっそり美紀（本物のあゆみ）の写メを見せて
「この写真の女性、知りませんか？」
「あ…あゆみちゃん」
という会話だけを離れた場所にいる探偵に聞かせる。

「この写真」を探偵はツーショット写真だと思っているが
実際には写メであり、チアガールは嘘を言っていない。
探偵と同時に観客もだまされた瞬間でした。

これで答えになってるのかな？
そもそも木村が写真を撮られなければ
こんなに複雑な事態にならなかったんですよね＾＾
by miyuco (2009-04-15 14:57) 

ありがとうございます！

＞あゆみでなければ誰なんだという事になり
＞万が一警察が動いていると知られてはまずいから。

なるほど。
木村と一緒にいる女をうやむやにしておくと
探偵に調べられるので都合が悪い
と、神野自身で判断していたんですね。
大変スッキリしました！
突然のワケのわからない奴の質問にお答え頂き
本当にありがとうございます。
by tommy (2009-04-15 17:14) 

お役に立ててホッとしました。
頭の中がこんがらがる映画ですよね＾＾；
by miyuco (2009-04-16 18:09) 

こんにちは＾＾
やっと観ました～＾＾；

すっきり爽快。
洋ちゃんの本来の演技が楽しめる映画だったと。
（あぁいうキャラのしか見てないもので・・・）

探偵目線から、本当のからくりネタバレに移り
それでも細かく、さり気なく散りばめられたポイントを
こちらの記事を読み納得いたしました。

面白かったです！！

by こにゃ (2010-05-04 17:42) 

こにゃさん、こんにちは。
おもしろかったですよね～この映画♡
プロットはもちろんよくできているのですが
男性役者さん３人がきっちり仕事していて
とても好感が持てました。
洋さん、もうけ役だったかもしれない＾＾
「わが家の歴史」のつるちゃん見てから
大好きになってしまった♪
nice!とコメントありがとうございました！

by miyuco (2010-05-04 19:02) 

度々すみません。。。

レスありがとうございました。

納得した気になっていたのに
思い出していくうちに、議員との接点がいまいち
分からなくなっています。
何か決定的な繋がりってありましたっけ？？
（もう一度観ればいいもののｘｘ）

“つるちゃん”も良かったですよね！
ちゃんと3日連続で視てました～＾＾

（TBもしちゃいました。よろしくお願いします＞＜）
by こにゃ (2010-05-05 13:13) 

こにゃさん、ＴＢありがとうございます＾＾
この映画はあとから疑問がわいてきますよね。
困ったもんです。

決定的なつながり、例えば議員が誰かと
取り引きしているような場面はなかったと思います。
「丸暴のやる仕事じゃないねえよ」というセリフや
美紀が久美子と警察で事情を説明したら
「公安」が出てきたというぐらいのほのめかしが
あっただけだったのでは。
パンフレットに載っていたシナリオを読んでも
そんな感じでしたよ。
by miyuco (2010-05-05 21:56) 

ありがとうございます＾＾

やっぱりセリフと行動もすみずみ追ってないと
分からないさりげなさだったのですね。
（やたら議員は出てましたから余計・・・）
すっきりしました！

ホント、ありがとうございました☆


by こにゃ (2010-05-05 22:14)