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『レインマン』 [外国映画]

名作の誉れ高い作品
1988年アカデミー賞主要4部門受賞
(作品賞/監督賞/主演男優賞・ダスティン・ホフマン/オリジナル脚本賞)
静かで控えめなのにとても印象的な音楽が素晴らしいです。
ダスティン・ホフマンの伝説的な演技から目を離せませんでした。

公開当時に観たけれど細部はほとんど覚えてなかった。
改めて観ると巧緻な脚本に圧倒されます。
お涙頂戴ではなく泣かせどころを派手に盛り上げるでもなく
むしろ淡々と進むロードムービー。
それだからこそ感動がじわじわとこみ上げてくる。
ダスティン・ホフマンが演じるレイモンドの
無表情なままで発する言葉に射抜かれるようでした。

事業に失敗して破産寸前のチャーリー(トム・クルーズ)のもとに、
絶縁状態だった父親の訃報が届く。
帰郷した彼は、父の遺産が匿名の受益者に贈られると聞き
ショックを受ける。
その受益者とはチャーリーがその存在さえ知らなかった
自閉症の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)だった。
なんとか遺産を手に入れようと
チャーリーは施設にいるレイモンドを誘拐まがいに連れ出し、
ロスに戻ろうとするのだったが……。

遺産目当ての自己中心的な考えから
むりやり兄を施設から連れ出すチャーリー。
自閉症の兄を理解する気など毛頭なく
奇妙な要求に応えるのは揉め事を起こさないため。
…のはずなのにチャーリーは冷酷な人間に見えない。
なんとなく優しい雰囲気を醸し出していて画面に温かみを感じる。
演出なのかあるいは演技力なのか
トム・クルーズが生来持っている気質なのかもしれない。
ダスティン・ホフマンは紛う事なき名演ですが
相手役がトム・クルーズでよかったと思います。

「レインマン」という題名を聞いたとき
それが何を意味するのかまったくわからなかった。
もしかしてホラー映画?なんて思っていた^^;

「子どもの頃、なにか怖いことがあると
レインマンが歌を歌ってくれた」
「子どもが頭のなかにつくる友だちさ」

歌ってなぐさめてくれたレインマンの正体がわかったとき
肉親の愛情とは無縁だと思いこんでいたチャーリーだが
実はそうではなかったと理解する。
チャーリーへの愛情ゆえに父と兄は苦渋の選択をしたのだ。

「C‐H‐A‐R‐L‐I‐E(しー・えいち・えー・あーる・える・える・あい・いー)」
「…main man」
これだけのセリフに込められた大きなものに
感情が揺さぶられる。

9年レイモンドを世話している「main man」バーンは
「オレが明日消えても気づかない」
と言っていたけれどそれは違う。
最大のパニックのときに「V‐E‐R‐N」を呼び助けを求めた。
父のこと(D‐A‐D)も忘れていない。
別れたときの幼い弟のことも覚えていた。
「C‐H‐A‐R‐L‐I‐E」のことも忘れないと
弟のチャーリーにはわかっている。

一緒にいたのはたった六日間だけだったけれど
チャーリーの心の自分ではどうすることも出来ない空白が
埋められていった濃密な時間でした。
「二週間後には会いにいく」
レイモンドを見送るチャーリーの表情が
最後の最後に一瞬崩れるように見えた。
本当にレイモンドを好きなのですね。
いままで肉親の情を感じることができなかった。
それを感じ取ったとき胸に満ちた感情は
思いもよらないものだったでしょう。

エンドクレジットのバックの写真は
レイモンドが旅の途中でカメラに収めた風景。
病院でのパターン化した生活は居心地が良く
そこで静かに暮らすことがベストだから
弟との旅は意に添わない旅だったけれど
彼の中に何も残らなかったわけではない。

レイモンドのモデルとなったのはサヴァン症候群のキム・ピーク氏。
映画のなかで発揮する特異な能力を彼は実際に持っています。
アカデミー脚本賞を受賞したバリー・モローは
「オスカー像」をキム・ピークに渡してしまいました。

脳科学者・茂木健一郎がキム・ピーク氏に会いにいき
彼の能力を紹介する番組を先日見ました。
キム・ピークの父親は彼のことを理解して欲しいときに
「オスカー像」を見せて「レインマン」の話をするそうです。
そうすれば理解を得ることが容易くなるという事です。


こんなエピソードもあったそうです。
ダスティン・ホフマンがキム・ピークに会いに来たときに
「君と友だちになりたいけど、
私の目を見てくれないと友だちになれない」と言った。
それ以来彼は初対面の人と話すときに目を見て話すようになり
父は彼にハグのしかたを教えた。

この映画を観て「自閉症」がどういうものかを
初めて知りました。そういう人が多かったと思います。
自閉症への理解を広めましたが
けっして啓蒙活動を匂わせるわけではない。
いい映画でした。
学校の授業で観たという話も聞きます。

ロンドンのウエストエンドで舞台版「レインマン」が
上演されています。
チャーリー役はジョシュ・ハーネット[ひらめき]
「かたくなな子ども」だったというチャーリーのイメージに
しっくりくるような気がする^^
(ひいき目?)
レイモンドを演じるのはイギリス人俳優アダム・ゴッドリー。

Rain_Man_s.jpg
 

レインマン

レインマン

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD


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コメント 3

びっけ

こんにちは。
私も茂木さんが出演していたサヴァン症候群の方を取り上げた番組、見ました。
アカデミー賞のオスカーをあげちゃうなんて!と思ったけれど、あのオスカー像がキム父子と他の人たちとのコミュニケーションのツールとして活躍していると知って、嬉しく暖かい気持ちになりました。
ダスティン・ホフマンの演技力には脱帽です。
でも、今回、miyuco さんの記事を読んで、
トム・クルーズの人柄の良さを感じさせる演技があってこそ、あの爽やかな感動があったのだなぁと思い知りました。
息子もこの映画に興味を持ったようなので、今度一緒に観てみようかな・・・。
by びっけ (2008-09-29 22:08) 

miyuco

びっけさんもあの番組をご覧になってたんですね。
オスカー像は最も有意義な場所に落ち着いたようです^^
トム・クルーズはもうけ役だったかもしれないけれど
とても魅力的ですてきでした。
え~と、この映画はニコ動洋画劇場に
こっそりとアップされてたりします^^;
(大きな声で言えないけど…)
nice!とコメントありがとうございました♪

by miyuco (2008-09-30 21:35) 

miyuco

般若坊さん、nice!ありがとうございます。

by miyuco (2011-12-06 22:28) 

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