『阪急電車』 有川浩

 

　阪急今津線
　路線距離：９．３㎞
　片道わずか１５分のローカル線
　宝塚－西宮北口間の8つの駅を舞台に
　乗客たちの様々な人間模様が綴られる
　

徒花スクモさんの装画がすてきです。
マルーン塗色された阪急電車
フランス語のマロン（marron）に由来する色名"Maroon"
栗色もマルーンと言い換えると洒落た感じになりますね。

宝塚駅から西宮北口駅までの８つの駅名を題名に
同じ電車に乗り合わせた乗客たちの物語
プラス折り返して駅名を逆に辿る後日談の８つの物語
あわせて１６編の連作短編集。

有川浩お得意の「恋が始まる瞬間」が楽しめました＾＾
かつて少女マンガで数え切れないほど目にしたシチュエーション
それなのにやっぱりほんわりした気持ちになる。
基本パターンをおさえつつ小道具をうまく使って料理する
そこにこの作者の技量が窺えます。

たまたま同じ電車に乗り合わせた人の
何気ない一言に背中を押されたり
車内のたわいない会話を聞いているうちに
自分の心の整理がついたり
「袖振り合うも多生の縁」
ということわざが思い浮かびます。
おもしろかった！

孫娘と一緒に電車に乗る老婦人がいいですね。
触れあった短い時間のなかで
迷える若いお嬢さんたちに的確なアドバイスをする。
心の中には亡き伴侶への愛情が満ちていて
かわいらしい方です。
こういうロマンチックな人物設定は
有川浩っぽいなと思います。

折り返しの後日談もおもしろかった。
気乗りしないつきあいを続けている弱気な中年女性
気の毒だったり歯痒かったり。
短編集を恋愛話１００％にしなかったところが
私には好ましかったです。

えっちゃんの彼氏のお話。
作者が実際に電車のなかで聞いたものだそうですが
私も電車での高校生の話には楽しませていただいてます。
笑いをこらえたりそれは違うよと突っ込みたくなったり＾＾
もちろん、うるさいだけの時もあるけど。

毅然とした老婦人はかつて高校教師だったのですね。

タグ：有川浩

コメント 3

ミナモさん、nice!ありがとうございました♪
by miyuco (2008-10-16 18:16) 

マルーン塗色された阪急電車はシックで素敵♪
乗客も品のある方が多く平気でジャージに雪駄で乗り込んでくる阪神の客とと全然ちがう…と大阪に越してきてウチノヒトに教わりました。
でも阪神デパートのイカ焼きだけは
上品な阪急沿線の御婦人も召し上がる。それも冷めたら美味しさが半減するのでフードコートや階段で立ち食いするのだとも(笑)
その阪急と阪神もホールディングスを設立しました。
イカ焼きホントに美味しいのでmiyucoｻﾝにも食べに来て貰いたいナァ。
この本を実際に阪急電車で読んだらどんな感じかしら？

by おきざりスゥ。 (2008-10-17 23:52) 

＞スゥ。さん
「 マルーン塗色」という響きがすでにロマンチック＾＾
イカ焼きってイカの姿焼きだと思っていたら違うんですね。
おいしそう[__！！]
阪急電車に乗って読んでいる人って
絶対にいると思いますよ[__バス]
nice!とコメントありがとうございました♪

by miyuco (2008-10-18 22:27)