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『フラワー・オブ・ライフ』  よしながふみ [コミック]

翔太が「そういうのが書きたい」と言っていた
「そういうの」がぎっしりと詰まっている
それが「フラワーオブライフ」という作品そのものなのね
というのが読み終わってすぐに頭に浮かんだことでした。

どうしてこれほどまでに細やかに
「ひとくちに言えないこと」を掬いあげて
表現できるんだろう、よしながふみという人は。

私にとっては、はるか昔のこととなっている高校時代。
これほど幸福感に満ちた出来事などあまりなかったけど
あの頃感じていた諸々の断片を
この物語のなかに見つけることができます。
こういう風なやりとりがあったなとか
あの時こんなふうにしたかったなとか
言いたかったのはこういう事だったのに
全然うまく伝えられなかったなとか

クリスマス会の帰りに相沢っちが言っていた
「あたし後期の中間あたりの今頃が
一学年の中で一番好き」
新学期はクラスに慣れるのに精いっぱい
夏休みが明ける頃にはクラスになじんできて
教室の中で息するのが楽になる
「やっと学校が楽しいなあって心から思えてくるのが
今頃なんだ…」
年が明けたらもっとみんなと仲良くなれるけど
別れの春が近づいてくる。
ああ、まさにこれと同じことを
あの頃考えてたなと懐かしく思い出しました。
時代が変わり若い人たちの質が変わってしまったと
言われているけれど、こういう感覚は
いつまでもいつまでも変わらないでしょう。

一ヶ月遅れで入学してきた「花園春太郎」
実は闘病生活のため「一年一ヶ月」遅れの入学だった。
まずは前の席の三国翔太と親しくなり、高校生活がスタートする。

三国翔太くんは本当にいいヤツ
協調性がなく自己中心的に見える真島を
空気が読めないわけじゃないと言う。
きちんと見て判断している。
話が進むにつれてその見方が正しいとわかります。

クラスメイトやその家族、先生、
登場人物が魅力的です。

地味で暗いけれど実は美少女という
王道の設定の武田隈子さんがお気に入りです^^
文化祭のクラス劇、自分の言葉に陶酔する真島に反撃する
渾身の一言がすばらしい!

以下、未読の方はご注意を…




 

*
*
*

「flower of life」
このタイトルが意味するところを知り
春太郎の胸中を察するともうたまらないです。

「隠し事がキライ」
だから自己紹介で自分が白血病だったこと
そして完治したことをみんなの前で披露する。
一巻でトラブルが発生したとき
担任のシゲはこんなことを言います。
「何たってあんたは白血病という悲運を乗り越えた
みんなよりちょっと偉い少年だもん」
病気のことを正直に話すのが悪いわけじゃない
「ただ自分の言った事で相手が多少気を遣うだろうな
くらいの想像もできなかったとしたら
あんたは馬鹿で子供で無神経だわ」
それを聞いてうつむく春太郎に
「― ま だからできる事もあるけどね」
とシゲは続ける。

そして四巻、春太郎は「隠し事」で守られていたことを知る。
家族が隠し通そうとした「本当のこと」
「隠し事がキライ」と無邪気に言えた春太郎はもういない。
家族が春太郎を守ろうとしたように
春太郎も大切な友人を守ろうとひとつ秘密を持つ。
そう考えるようになったのは少し大人になったからなのか
あるいは「大切な人」ができたからなのか。

「普通になりたい」と号泣するハル太に胸がつまります。

余韻を残すラストシーンも素晴らしいです。
春太郎は胸を張り毅然と前を向いて歩いている。

最近の漫画家さんの作品はほとんど読まないので
どうしても24年組がメインだった頃の作家さんしか
でてこないのですが
くらもちふさこや吉田秋生がかつて描いていた
学園物を思い浮かべたりしました。

フラワー・オブ・ライフ (1) (Wings comics)

フラワー・オブ・ライフ (1) (Wings comics)

  • 作者: よしなが ふみ
  • 出版社/メーカー: 新書館
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: コミック

ああ、終わりにしようとしたのに
まだまだ書きたいことがたくさんあってどうしよう。

できた人、山根さんの「大人げない」表情とか
武田さんの慣れないショッピングにつきあう女子の話とか
ハル太の姉ちゃんが仲間はずれを嫌がる件とか
花園家の太陽であるお母さんが
同時に裁判官であり独裁者であり
そして子供を愛する普通のお母さんであるところとか
クリスマス会を企画した当事者の辻くんが
楽しみにしているのが自分だけだったらどうしようと
思い悩むところとか
得意分野で実力を発揮しようと分担した役割を
果たそうとするのにちっともうまくいかない面々とか
やっぱり真島くんは実はかっこいいビジュアルという
設定だったのねとか

好きなエピソードが多すぎて困ります。
「フラワー・オブ・ライフ」がいかに大好きな作品なのか
ご理解いただけると思います^^

一巻のおまけページ、真島のコミケネタには爆笑!


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miyuco

ミナモさん、nice!ありがとうございました♪
by miyuco (2008-10-28 18:05) 

miyuco

KOさん、nice!ありがとうございます♪
by miyuco (2008-12-03 22:49) 

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