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『ガーディアン』 石持浅海 [読書]

初めての石持浅海の作品がこの本だったのは
あまり好ましくないことだったのかな。
う~ん、いまいちでございました。
設定はおもしろく、最後まで読ませる力はあると思う。
けれども、なぜこうまで登場人物に魅力的がないのか。
物語を進める手駒にしか見えない。
手駒を自在に操りゲームとして楽しませてくれるなら
それはそれでいいのだけれど、そこまではいかない。
もう少しひねりがあればよかったのに。

幼時に父を亡くしてから、勅使河原冴(てしがわらさえ)は
ずっと不思議な力に護られてきた。
彼女が「ガーディアン」と名づけたその力は、
彼女の危険を回避するためだけに発動する。
突発的な事故ならバリアーとして。
悪意をもった攻撃には、より激しく。
では、彼女に殺意をもった相手には?
ガーディアンに殺されるのだろうか
特別な能力は、様々な思惑と予想もしない事件を呼び寄せる。

この能力は自分では制御できない。
判断するのは不思議な力を発動する「なにか」
彼女はそれを亡き父親だと考えている。

「勅使河原冴の章」
本人が悪意を感じる前にガーディアンが反撃する場合
身近で危害を受けた人を見てはじめて
自分が危険にさらされていたのかもしれないと考える。
しかし判断材料は何もない。
ゆえに割り切れない薄気味悪さだけが残る。
それがまた周りを巻き込み、守護者であるべきガーディアンが
悪意を引き出す疫病神になってしまう。
この設定はおもしろいです。
でも…

 

主人公の女性があまりにも無防備に
ガーディアンを受け入れすぎていてつまらない。
だって明らかにやりすぎでしょう。
それを何とも思わないの?

原田さんの転落死
「お試し」の結果を見て実行したという事ですが
実際に目撃したたった一回の成功例だけで
あれほど間髪いれずに行動に移せるものかな。
自殺することを踏みとどまっていた人間の
背中を押したのがガーディアンであるのは間違いないけど
どうも原田さんの心情がわかりづらい。

「栗原円の章」
冴から離れたガーディアンはその娘の円を守ります。
さらに過激になって。
「目には目を」ではなく「目には命を」くらいの勢いです。 

中学生の円は友人と入った郵便局で
強盗犯に鉢合わせしてしまった。
犯人たちは逃走中の車が事故に遭ったため
郵便局の配達車両を手に入れようとしていた。
中を素通りして裏口から出るだけのつもりだったのに
そこにガーディアンを従えた円がいたために
計画が狂ったわけです。
押し入った直後、犯人のひとりが円と接触し
大けがをする。そこから歯車が狂い出す。

死ななくてもいい人間がどんどん死んでいく。
疫病神の存在が強烈に作用します。
しかも犯人たちがお馬鹿さん。
お馬鹿さんのなかのちょっとお利口さんも
人知を超えた力にひれ伏す。
最後はあまりに短絡的でもう少しうまくやって
ひねりを見せていただきたかったです。
結局破滅するのは目に見えてたけど。

美少女は累々たる死体を前に一切動揺せず
超然とその場に君臨し勝者になる。
まるで殺戮マシーンみたいと思ってしまった。
キミは凶暴なるガーディアンを
そのまま受け入れていいの?

ガーディアン (カッパ・ノベルス)

ガーディアン (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 石持浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/08/21
  • メディア: 新書


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