SSブログ

『ガリレオの苦悩』 東野圭吾 [読書]

帝都大学物理学助教授(准教授)の天才物理学者
湯川学を主人公にしたガリレオシリーズ。
5篇からなる短編集。

バリエーションに富んだ五つの物語。
作品ごとに様々な趣向を凝らしていて見事です。
ドラマを見て興味を持ち本を手にした読者を
失望させることはない出来映えです。
楽しませていただきました。

科学的な知識を駆使して謎を解明していく。
私のような理系とは無縁の人間には
それが実行可能なのかという判断はできないので
煙に巻かれてしまったような気分になることがある。
どうねじ伏せてくれるかは
作者の技量にかかっていると思うのですが
妙に魅力的な変人物理学者・湯川の人物設定が
それを成功に導いています。

「落花る(おちる)」
これはまさにそんな引っかかりに応えたような作品でした。
湯川は可能性を提示しているにすぎない。
警察がそれを受け取って検証し真実に近づいていく。

「攪乱す(みだす)」
読み応えがありました。
湯川に挑戦状を突きつけてくる「悪魔の手」と名乗る人物。
第三者としてではなく当事者として事件に関わるとなると
アグレッシブにならざるを得ません。
攻めの姿勢で仕掛けていく湯川が魅力的でした。


書き下ろしの「指標す(しめす)」がよかった。
ある事件に関わった中学生の少女が
水晶の振り子を使いダウジングで答えを導こうとする。
こういう作品を短編の中にひとつ入れるところが
うまいです。
湯川らしくないようなセリフが出てきます。
科学万能主義の頭がかたい人ではないのね。

 

 

「操縦る(あやつる)」
ダイナミックな仕掛けがおもしろかった。
しかしこの被害者はどうしようもないわね。
君は変わった。昔は科学にしか興味がなかったはずなのに
という友永に湯川はこう答えます。
「人の心も科学です。とてつもなく奥深い」

「密室(とじる)」
…いまいち。
11月の寒い時期なのに
風呂上がりに花火をする父子って不自然。
謎も小粒で湯川先生を駆り出すこともないでしょう。

「落下る」で内海薫が初登場します。
男性主体の警察組織の中で女性刑事はやりにくい部分が
多々あるでしょうけれどそんな事に負けてはいません。
「彼女はいい刑事になるよ」と湯川は言います。

「君には彼にないものがたくさんあるからね」
「たとえば女性特有の直感力、女性特有の観察力
女性特有の頑固さ、女性特有の執念深さ、
女性特有の冷淡さ…もう少し続けようか」
                     「攪乱す」297p

薫と湯川の掛け合いもいいけれど
湯川と草薙の学生時代を引きずっているようなやりとりが
いいですね~。

「落花る(おちる)」「操縦る(あやつる)」
この二つの作品はドラマ化されたのを見ていたので
読む楽しみが半減されて残念でした^^;
(ドラマで湯川の学生時代を演じた三浦春馬くんの
一見冷たい雰囲気がとてもよかったな)

ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/10/23
  • メディア: 単行本

図書館に早く返さなければ。
待機人数がすごいことになってる[あせあせ(飛び散る汗)]


nice!(2)  コメント(3)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 3

ayaka

早いですね~(^o^)
もう図書館にあるんですか・・・ハードカバーは高いので
借りて読むほうがお得ですね。

ウチは旦那が買うと言うので待ってます(笑)
いつになったら読めるのかな?
とりあえず前記事は読まないでおきました(^_^;)
この時期に2冊同時発売なんて、ハメられました。
by ayaka (2008-12-06 10:35) 

miyuco

ふふふっ、早いでしょ^^
おもしろかったですよ!
ハードカバー2冊同時発売はひどいですよね。
ダッシュで図書館に予約にいきました[ショック!]
ウチのダンナさんも読みたそうにしてたけど
待っている人が多いのであきらめてもらいました。
ご夫婦で謎解きを楽しんでくださいませ[ラブラブハート]
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2008-12-06 17:11) 

miyuco

KOさん、読んでいただいてありがとうございます♪
by miyuco (2008-12-06 17:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1