『ラットマン』 道尾秀介 [読書]
おもしろかった!
初めて読む作家さんです。
「文春ミステリーベスト10」にランクインしていたので
興味を持ちました。
文章の中にさまざまなトラップが
仕込まれているというパターンなのかなと思い
注意して読んでいきます。
読みやすい文章で状況説明も的確。
道尾秀介さん、いいではないですか。
[ラットマン]
「『見る』とか『聞く』とかいう行為はさ、
文脈効果によってかなりの影響を受けるんだ。
文脈効果ってのは、人間が何かを知覚する過程で
前後の刺激が知覚の結果を
変化させてしまう現象を言う。」
有名なラットマンの絵
「動物と並んでいるほうは、ネズミに見える。
ところが人の顔と並んでいるほうは、
おっさんの顔に見える。ほとんど同じ絵のはずなのにな」
なるほど、題名の「ラットマン」はこの作品にふさわしい。
これが物語のモチーフになっているわけですね。
主人公の視点は別の誰かの考えに影響されているが
本人はそのことに気づかない。
目の前の現象を何かの結果だと決めつけてしまうと
別の方向からそれを見ることは難しい。
不審な言葉や態度に知らず知らずのうちに誘導されている場合は
もっと難しくなる。
過去に体験した事件をなぞるように
目の前の事件を捉えていたが
真実を知りその見方が覆されたとき、
過去の出来事への視点もひっくり返される。
うまいです。
以下、未読の方はご注意を
*
*
*
*
*
どんな理由があるにせよ幼い子どもを虐待する親を
許す気にはなれない。
始めのほうは姉のひかりの描写が少なくて
どんな性格なのかよくわからなかったけれど
後半になると嫌なヤツだという印象が残ります。
でも、あんなに簡単に殺されなくてもよかったのに。
ひかりが殺害された事件はパズルのピースにすぎない。
ちょっとかわいそうかな。
父親がいつもかぶっていた茶色のキャップ
姉が病床の父親と戯れる描写
母の白いトレーナーの袖が真っ赤に染まっている
散りばめられている文章が上手く読者を導き
そしてそれが最後にきれいに裏返される。
こういう快感は得がたいものです。
姫川と桂は幸せになるといいですね。
ちょっとだけ意地悪な一言^^;
スタジオ経営者、影薄すぎ。
あまりに薄いので逆に疑ってしまいました。
コメント 0