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『獣の奏者』(I 闘蛇編) 上橋菜穂子 [読書]

極上の長編ファンタジーです。
政(まつりごと)に翻弄され
主人公たちが予期せぬ事態に陥る場面があります。
(守り人シリーズもそうでした)
追いつめられたとき、人としての資質があらわになる。
傷つき打ちのめされても、内に秘めた光り輝くものを
決して見失わず、流されず
矜持を忘れずに、難しい選択をする場面が
上橋菜穂子さんの作品には必ず登場します。
それを読むたびに胸が熱くなります。

獣の奏者 I 闘蛇編

獣の奏者 II 王獣編 









『I 闘蛇編』
エリンが「獣の奏者」になるまでが描かれます。
まだ政治のかけひきに引きずり込まれてはいない。

【獣ノ医術師】の母と暮らす少女、エリン。
ある日、戦闘用の獣である闘蛇(とうだ)が何頭も一度に死に、
その責任を問われた母は処刑されてしまう。
孤児となったエリンは蜂飼いのジョウンに助けられて暮らすうちに、
山中で天を翔ける王獣と出合う。

湖のほとりに泥にまみれて倒れているエリンを
見つけ介抱したジョウンは
蜂を飼いながら一人で暮らしている。
何か特別な事情があるようだと察しながらも
しっかりしていて聡い子どもとなら
何とかやっていけるのではないか
エリンが望むならと一緒に暮らし始める。

ジョウンとの暮らしを読むのは楽しかった。
健やかに育つ子どもと
それを温かく見守る知識ある大人。

生き物に惹かれ、自分が発見したことを黙って考える。
エリンの生来の資質はのびのびと育まれる。
知識を欲するエリンに様々なことを教えるようになると
ジョウンはどこまでも伸びていく子どもを育てる喜びを知る。
エリンは優れた耳を持っていて
一度聞いた音を完全に再現することができた。
ジョウンの手ほどきのもと竪琴づくりに熱中するようになる。
これが後に王獣と意思を通わせる伏線になります。

幸福感に満ちた二人の生活は唐突に終わります。
かつて石もて追われるような仕打ちをうけた世界に
ジョウンは戻らなければならない。
エリンは【王獣の医術師】になろうと決心する。
かつて山中で天を翔ける王獣に出会い
その姿に魅了されていたのだ。

母のようになりたい。
深い知識を持ち、その知識で獣を助ける者に。

王獣保護場のカザルム学舎で学ぶエリンは
傷ついた幼獣・リランの世話をすることになる。
けっして人に馴れることのない王獣。
野性の王獣を観察していたことがあるエリンは
独自の方法でリランに近づいていく。
その結果…

暗雲たちこめる展開になることが予想されて
ハラハラしながら読みすすめました。
どうか救いの手が差し伸べられますようにと
祈るような気持ちになります。

「闘蛇」と「王獣」は政治と密接に絡みついている生き物
王獣と意思の疎通ができるということは
すなわち操ることができるということ。
エリンは意に沿わぬ局面に立たされることになる。

長くなりました…
「II 王獣編」の感想は次のエントリーに書きます。
続きが気になり二冊を一気に読んでしまいました。


タグ:上橋菜穂子
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コメント 4

薔薇少女

>追いつめられたとき、人としての資質があらわになる。
傷つき打ちのめされても、内に秘めた光り輝くものを
決して見失わず、流されず

本の事は良く解らないんですが、↑の言葉には共感します!

by 薔薇少女 (2009-02-06 09:21) 

おきざりスゥ。

で…原作の読者としてNHKで放送中のアニメの感想は如何に?
by おきざりスゥ。 (2009-02-06 18:24) 

miyuco

>薔薇少女さん
追いつめられても感情に流されないで
まっすぐに判断できればいいのですが…
難しいです。
nice!とコメントありがとうございました。
by miyuco (2009-02-06 22:28) 

miyuco

>スゥ。さん
アニメは原作の背景を説明している段階で
ゆったりと進んでいます。
原作を読んでいる人はまだ見なくてもいいかな?
(スイマセン)

by miyuco (2009-02-06 22:32) 

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