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『愚者のエンドロール』 米澤穂信 [読書]

『氷菓』に続きこちらも読了。
おもしろかった!
シリーズはあと二冊、まだまだ楽しめそうです。

あらすじを読んだ時点ではあまり期待していなかった。
映画の結末探しに乗り出す?
制作者の意図を確認すればいいだけの話で
「謎」にならないのでは?と思った次第です。
で、読んでみたのですが、…おもしろかった^^;
「謎」のまわりの心理戦が見事でした。

「…わたし、気になります」
文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て
千反田えるが呟いた。
その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で
少年が腕を切り落とされ死んでいた。
誰が彼を殺したのか?その方法は?
だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。
続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に
結末探しに乗り出した。

表紙にサブタイトルが載っています。
「Why didn't she ask EBA?」
〈何故、江波(倉子)に頼まなかったのか?〉

以下、覚え書き
未読の方はご注意を


 

*
*
*
*
*

制作者に問い質すべきだという
あまりに素朴な考えはひとまず置いといて
ストーリーの流れに身をまかせてみる。
映画を詳細に分析して結論を導き出す過程は
おもしろかった。

「女帝」入須冬美
「彼女のまわりの人間は、いつしか彼女の手駒になる」
あらかじめ設定された結末に誘導されて手駒になるのは
愉快ではない。
なぜ彼女は事情を説明することを避けて
まわりくどい事をするのか。
こちらの謎解きが見事でした。

古典部のメンバーの指摘で
奉太郎は映画の脚本をただの文章問題としか
見ていなかった自分の間違いに気づく。
脚本家の真意を言い当ててはいない。
しかし「女帝」が望んでいたのは
脚本家の思惑を重視するのではなく
文章問題として解答を導き出すことだったのではないか。
「女帝」が最もうまく事を収めるために思い描いた
コンセプトを奉太郎は実現させたわけです。


「女帝」入須冬美の狙いがどこにあったのか
奉太郎は自分の考えを本人に直接語ります。
この時点で奉太郎は手駒ではなくなっている。

持ち上げられて、たたき落とされたのは
気の毒だったけれど、それもいいクスリだったのかな。
やっぱり女難の相が濃いみたい。

脚本を書いた本郷真由
「生真面目で、注意深く、責任感が強く
馬鹿みたいに優しく、脆い」
最後のチャットログでの発言は
その通りの印象でした。
入須は本郷が望むものを読み違えていたようです。

 「Why didn't she ask EBA?」
江波に頼んでもしかたなかった。
なぜなら映像が脚本家の意図から離れてしまい
彼女には収拾をつけることができないから。
本郷真由の心情を慮ることで
別の視点を提示した千反田える。
「女性に御される」タイプの奉太郎は
きっとこれからも振り回されることでしょう^^

冒頭の「あ・た・し♪」さん
「君の話は三人から聞いていた。
一人は千反田。一人は学外の人間。
そしてもう一人は、遠垣内将司よ。」
入須冬美が言っていた「学外の人間」は
あまりに奉太郎に近い人間でした。

そして姉は「女帝」の本心を言い当てる。
脚本を却下したかっただけでしょと。
「氷菓」に続き、またもやすごい存在感。
奉太郎の上をいきました。
おそるべし!

愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)

愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2002/07
  • メディア: 文庫


タグ:米澤穂信
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miyuco

ミナモちゃん、nice!ありがとうございます♪
by miyuco (2009-02-27 21:07) 

miyuco

薔薇少女さん、nice!ありがとうございます♪
by miyuco (2009-03-14 13:20) 

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