SSブログ

『まほろ駅前番外地』 三浦しをん [読書]

ルルとハイシー、星良一、岡老人、田村由良
この名前にピンときたらレジまで 

帯にはこう書かれていましたが
悲しいかなルルとハイシーにしかピンとこなかった。
ああなんて悲惨な記憶力…
でも、読んでいるうちに思い出しました^^
「まほろ駅前多田便利軒」の続編です。

七作が収められている連作短編集。
おなじみのメンバーが登場します。
最後の作品では行天の身のうちにある
漆黒の闇が浮かび上がります。
こういう形のフラッシュバックはつらすぎる。

多田と同じように読者である私も知りたい。
「凍えた人間をもう一度よみがえらせる、
光と熱はどこにあるのだろう。」
次回作でどうか行天が少しでも救われますように。

「光る石」
便利屋さんの仕事はバリエーションに富んでます。
行天の人間観察力は明らかに多田より上だわね^^
ヤツの身体を通過した指輪がかわいそう。
「星良一の優雅な日常」
星良一って誰だっけ?
前作ではあまり印象に残らなかったけど
ユニークな方でした。
「思い出の銀幕」
曽根田のばあちゃんの若かりし日のできごと。
危険な男は魅力的だけど
ばあちゃんの伴侶となる男性も剛毅で素敵です。

「岡夫人は観察する」
横中バスの間引き運転の尻尾をつかむことに
執念を燃やす岡は今日も多田便利軒に
仕事を依頼する。
第三者の岡夫人の視点で多田と行天が語られていて
おもしろかった。

「穏やかそうだが、どことなく倦んだ眼差しをしている。」
「雪の結晶を連想した。
微塵に砕かれるのを待つかのように、
諦めごと凍りついた目だ。
無骨な外見とは裏腹に、男の内部では多くの線と角が、
繊細な模様を織りなしているにちがいない。」

最初に会ったときの印象と
助手をつれてくるようになってからの多田の様子は
ずいぶん変わった。
「行天」という名前から近くに住んでいた少年の
無表情な顔を思い出す。
「荒野のごとき空白」を顔にうかべていた少年が
笑い感情を表にし、あの頃よりずっと幸せそうに見える。
よかった、と岡夫人は思った。

岡夫人が語る夫との間にある感情。
心のなかにある、灯火のようなもの。
「男女や夫婦や家族といった言葉を超えて、
ただなんとなく、大事だと感じる気持ち。
とても低音だがしぶとく持続する、
静かな祈りにも似た境地。」
「灯火」というのはすてきな表現ですね。

「由良公は運が悪い」
運が悪いのか?ギョーテンが疫病神なだけ?
由良はしっかり者ですね。
どっちが大人なんだよ、まったく。
とにかく同窓会問題は解決です。

「逃げる男」
どうしようもなくすれ違ってしまう
亜沙子さんはせつないですね。

ばりばり働いて、強くて、
でもちょっとさびしい部分もある女。
あんた、そういうひと好きでしょと行天は言う。
まったくこの男は何でそんなにお見通しなのかな。
結局多田は「恋に落ちる瞬間」を体感してしまうわけで。
これはどう展開するのか?
つ、つづきを早くっ!

「なごりの月」
行天は身のうちにあるものを恐れ憎んでいる。
長年に渡り痛めつけられた記憶は
フラッシュバックとなり奔流のように流れ出す。
行天の姿はあまりに悲しすぎます。
どうかもう少し楽になれますように。

行天にのっとられたかと思わせておいて
実はやっぱり多田が主役でしたね。

まほろ駅前番外地

まほろ駅前番外地

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 単行本



 


タグ:三浦しをん
nice!(3)  コメント(6)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 6

miyuco

southさん、nice!ありがとうございました!

by miyuco (2009-12-03 16:36) 

miyuco

ミナモちゃん、nice!ありがとう♪
by miyuco (2009-12-03 16:37) 

ミナモ

読みました!
もう、このシリーズの続きがでるとは思ってなかったのですごく嬉しかったですよ~v
by ミナモ (2009-12-08 22:28) 

miyuco

私も同じです。嬉しかったです^^
あと一冊出るそうなので今度は
ギョーテンを何とかしてやって下さいと
三浦しをんさんにお願いしたい気持ちでいっぱいです。
by miyuco (2009-12-09 18:51) 

びっけ

前作を読んでなくて(あることすら知らなくて)、こちらを読んでしまいました。
ユニークな二人ですよね・・・脇役も!

私は「岡夫人は観察する」が一番、心に残ったかも。
岡氏と私の夫はタイプが違う感じだけれど、何となく他人事ではない未来を見せ付けられたような・・・(^^;

これから前作を探して読んでみま~す!

by びっけ (2010-07-29 15:35) 

miyuco

>びっけさん
もしかすると前作のほうが完成度が高いかも。
リンクしているところが多いので
読んでみるとおもしろいですよ~。
びっけさんのダンナさんって
岡氏のイメージに重なるのですか?!
どこか憎めないひとですよね^^

「まほろ駅前多田便利軒」は映画化されるそうです。
多田を演じるのは瑛太、行天は松田龍平です。
映画「アヒルと鴨のコインロッカー」での
二人の空気感が大好きだったので
私としては期待大です。
でも、瑛太はちょっと雰囲気が若すぎるかな?
実際は同い年のようですけど。

nice!とコメントありがとうございます♪
by miyuco (2010-07-30 18:48) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1