『ダブル・ジョーカー』 柳広司

『ジョーカー・ゲーム』の続編。
結城中佐率いる【D機関】の暗躍の陰で、
もう一つの秘密諜報組織“風機関”が設立された。
だが、同じカードは二枚も要らない。どちらかがスペアだ。
表題作「ダブル・ジョーカー」ほか、“魔術師”のコードネームで
伝説となったスパイ時代の結城を描く「柩」など、5編を収録。

「ダブル・ジョーカー」
「何があっても死ぬな、殺すな」
と叩き込む【D機関】を快く思わない陸軍上層部の
手厚い支援のもとに立ち上げられた
もう一つのスパイ養成学校・風戸中佐率いる【風機関】
生き残りを賭け、【D機関】を出し抜くべく活動を開始する。

…群れた時点で勝敗は明らかなのでは…
お粗末な茶番劇を見せられた気分になります。
【風機関】は結城中佐がかっこよく登場するまでの
前ふりにすぎなかった。
屋敷に向かい負けが濃厚になった時点から
「魔王」の登場をわくわくして待ってましたわ。
素敵すぎる登場シーンでした。

モデルは「陸軍中野学校」
昔々、小野田少尉がフィリピンルバング島から帰国したときに
終戦を信じず、戦争終結から２９年も戦い続けたのは
「陸軍中野学校で教育を受けたから」
というのも原動力になっていたのではないかと報道されていました。
中学生だった私はそれが特別な機関だったとは知らず
名称だけが頭に残ったのですが、
やっと意味することが理解できました。

「陸軍中野学校」　（Wikipediaより抜粋）
八紘一宇、大東亜共栄圏といったスローガンは一顧だにされず、
「戦時中で最も自由主義的ではなかったか」
と回顧する出身者もいる。
また、天皇に対する見方も自由であり学生や教官の間で
天皇制の是非が討論される事もしばしばだったという。

「柩」
「魔術師」のコードネームで諜報活動を行っていた頃の
若き日の結城を知ることができます。
物語は不慮の事故で死んだ日本人「真木克彦」の
身辺を洗うドイツの情報部の視点で描かれます。
徹底的な偽装、、【D機関】のスパイの仕事ぶりが素晴らしい。

 

「蠅の王」
芸人の客を見る目をあなどってはいけない。
あまりに危険な「ワキサカ式」通信手段が
高く評価されていると思いこんでいたのは滑稽です。
不自然な死体をあちこちに作られたら迷惑だと
【D機関】の彼は言う。
罪なき人を殺してまで任務を遂行することを優先する。
高邁な理想の実現のためなら手段を選ばないという考えは
自分に酔っている人間が陥りがちの醜い論理です。
脇坂が自滅するのは時間の問題だったでしょう。

「仏印作戦」
どう考えても永瀬は目立ちすぎ。
【D機関】の教えを読み続けてきた読者は
違うだろうとすぐにわかるはずです。
本物のスパイはどこに出てくるのかと思っていたら
そうきましたか。さすがです。

「ブラックバード」
「とらわれない」ということは難しい
それが命取りになった「過去にとらわれた男」の物語。
スパイとは過酷なものですね。

続編はまだ出るのかな？期待してます！

 

ダブル・ジョーカー

• 作者: 柳 広司
• 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
• 発売日: 2009/08/25
• メディア: 単行本

コメント 4

エントリー777件目おめでとうございまスゥ。

７が３枚にダブル・ジョーカーで７のワイルドカード！

ロイヤルストレートフラッシュを凌ぐ最強の手になりましたネ(Φ∀Φ)V
by おきざりスゥ。 (2010-03-15 22:58) 

うわっ！
このエントリーにそんなすてきな意味づけができるなんて
スゥ。さん、お見事です！
（ブログ主はな～んも考えてなかった＾＾；）
この本にでてくる魔王・結城中佐の悪魔的な力は
ここにまで及んだのかもしれない…
nice!とコメントありがとうございます♪
by miyuco (2010-03-17 15:55) 

…と思ったンですがWikipediaを確認して見たら色々まつがいが(〃∇〃)ゞ

まずワイルドカードって役ありませんでした(>_<)

他の好きなカードに置き換えて使えるジョーカーのことをワイルドカードって云うのネ(+_+)

でジョーカーをワイルドカードとして使って例えば7777Jにした場合をファイブカード(日本以外の英語圏ではファイブ･オブ･ア･カインド)
と呼ぶンでした(v_v。)。

ンでもってローカルルールに依っては最強でない場合もアルみたいだけど…(--;)

ファイブカードが最強のルールもあるって書いていあったから勘弁してェ～(;o;)
by おきざりスゥ。 (2010-03-17 19:16) 

ふふふっ
カードって奥がふかいですね＾＾
by miyuco (2010-03-18 20:03)