『東京バンドワゴン』 小路幸也

古本も事件も引き取ります。
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。
ちょっと風変わりな四世代の大家族が、
転がりこんでくる事件を解決する。
おかしくて、時に切なく優しい、
下町情緒あふれる春夏秋冬の物語
　　　東京バンドワゴンシリーズ公式サイト

おとなりの奥さまは北村薫と小川洋子のファンだそうです。
「東京バンドワゴン」シリーズも大好きだということを聞き
読んでみました。
ちょっとした日常の謎がアクセントになっている
あったかい物語でした。おもしろかった。

大家族、下町のお店、ご近所さんとのおつきあい
家族全員が集まるにぎやかな食卓、
ごはんを食べながらてんでんばらばらに話が飛び交う
父と息子は取っ組み合いのケンカをする
若いお嬢さんが住み込みで働きはじめる
…「寺内貫太郎一家」みたい
と思っていたら最後のページのあとにこんな一文が。

「あの頃、たくさんの涙と笑いを
お茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。」

ああ、よくわかる。
これを書きたかった作者の気持ち。
作者の小路幸也さんと私はほぼ同い年なのね。
（誕生日が一ヶ月しか違わない）
同じようなドラマを見て
泣いたり笑ったりしていたわけですね。

でも、あの世界を今現在テレビで再現するのは難しい。
若い人にも受け入れやすいようにアレンジして
活字で雰囲気を再現した「東京バンドワゴン」シリーズが
大勢の人たちに楽しんでいただけると
あの頃のドラマが大好きだった私たちの世代は
とても嬉しいです。

「伝説のロッカー」
６０歳で長髪金髪の我南人（がなと）がインパクト大です。
「LOVEだねぇ」などと言いながら
抜群の行動力と自由な発想で
さりげなく問題を解決に導きます。

古本屋店主・堀田勘一さんもいい味出してます。
こういう人がいないと大家族ものは成立しないですよね。
〈本は収まるところに収まる〉
 

「東京バンドワゴン」とは明治１８年創業の老舗古書店
東京の下町、お寺の多い地域にあります。
三代目店主は堀田勘一（７９歳）
物語の語り手は連れ合いのサチさん。
残念ながらこの世を去っています。
勘一とサチの一人息子・我南人（がなと）は
長髪で金髪の６０歳・伝説のロッカー
（妻の秋実は五年前に急死）
我南人の子どもは３人。
シングルマザーの藍子、娘は花陽（かよ）
長男の紺、連れ合いは元国際線スチュワーデスの亜美さん
ふたりの間には研人がいます。
次男の青。
上は７９歳、下は１０歳の大家族です。

この家族だけでも人数が多いのに
ご近所さんたちや古本を愛する人たちが
レギュラーで登場します。
新たに家族の一員になる人も出てきて
登場人物はさらに増えそうです。

それもまた楽しいですね。

〈春・百科事典はなぜ消える〉
仕入れた覚えのない百科事典が棚にあった
しかしいつの間にか消えている。なぜ？
犯人はかわいい女の子。
その行為の裏にあるものはある家族の物語。
我南人がマンションの屋上で演奏するのは
「All You Need Is Love」
近所迷惑なこのライブが問題解決の糸口になったのかな。

〈夏・お嫁さんはなぜ泣くの〉
シングルマザーを選んだ藍子
娘の花陽（かよ）の父親との事情が明らかに。
青はかわいいお嫁さん候補を連れてきます。
いきなり短髪黒髪になった我南人は
相変わらずいいとこどりですわね。

〈秋・犬とネズミとブローチと〉
行方不明になったご婦人の謎
値付けにいった先の本と持ち主が
一晩たったら消えてしまった謎のお話し。

〈冬・愛こそすべて〉
我南人が決して話そうとしなかった
青の母親が誰だったのか明らかになります。
結婚式での勘一の粋な計らいがよかったです。
お若い二人、どうぞお幸せに。

東京バンドワゴン

• 作者: 小路 幸也
• 出版社/メーカー: 集英社
• 発売日: 2006/04
• メディア: 単行本

タグ：小路幸也

コメント 3

ミナモちゃん、nice!ありがとう♪
by miyuco (2010-04-08 18:20) 

遅ればせながら。
このシリーズ大好きです^^
サチさんの語りが優しくていいですね。
by リュカ (2010-04-08 22:28) 

リュカさんもこのシリーズお好きでしたか＾＾
そうですね。
サチさんの語りが物語をふうわりと包んでいる感じです。
勘一さんとサチさんの若い頃が描かれている
「マイ・ブルー・ヘブン」を次は読みたいと思っています。
新作も今月下旬には発売するらしいのでそちらも楽しみ♪
nice!とコメントありがとうございました。
by miyuco (2010-04-11 12:01)