SSブログ

『インシテミル』 米澤穂信 [読書]

結城理久彦は、車がほしかった。
須和名祥子は、「滞って」いた。
オカネが欲しいふたりは、時給11万2000円也の
怪しげな実験モニターに応募。
こうして集まった12人の被験者たちは、
館の地階に7日間、閉じ込められることに。
さて。あとはご想像どおりミステリーの定法に則って、
ひとり、またひとりと謎の死を遂げていくわけです、が……。
              文藝春秋HPより(立ち読みできます)

クローズド・サークル(closed circle)
ミステリ用語。
雪の山荘、嵐の孤島などに代表される
「閉鎖された空間」のことを指す。
だいたい殺人が起こる。

地下につくられた〈実験〉用施設【暗鬼館(あんきかん)】
円卓の上には人形が12体置かれている。
赤い顔に、鳥の羽根飾り、ネイティブインディアンの人形。

…インディアン人形
「そして誰もいなくなった」を思い出してゾッとする。
これはそういう方向にいく話なの?

…そういう方向の話でした…
殺人ゲームが幕を開ける。
どのタイミングで殺されるか、
誰が容疑者になるのか、その理由は?
次に殺されるのは誰なのか?
残された人物が少なくなる、
どんなふうに結末をつけるのか。
『インシテミル』はとても巧みに作られていました。
おもしろかった!

理久彦くんはのんき者に見えたけど
反骨心があってなかなか凛々しかったです。


「今回の実験のテーマに沿い、
より主人の意図を体現した行動を取ることによって、
ボーナスを得ることが出来ます。」
「人を殺した場合。
人に殺された場合。
人を殺した者を指摘した場合。
人を殺した者を指摘した者を補佐した場合。
皆さまは、より多くの報酬を得ることが出来ます。」


しかし冷静に提案する者がいた。
何もしなければ七日間で1800万円を超える金額を
手にすることができる。リスクを犯すことはない。

殺し合いが起こることなく七日間を静かに過ごして
大金を手に入れられる…わけがなかった。
一人の男の射殺体が発見される。
閉ざされた場所で疑心暗鬼が広がり
危険なゲームは否応なしに始まってしまう。

「インシテミル」は映画化されるそうです。
ホリプロの創立50周年記念映画の豪華キャスト。
米澤穂信さんがブログ「汎夢殿」でそれについて書いています。
http://pandreamium.sblo.jp/article/34837253.html

「インシテミル」はミステリーに「淫してみる」という意味だったのね。

以下、未読の方はご注意を。
余計なことは書かないほうがいいとわかっているのですが…


 

 

圧死には意表を突かれました。

閉じこめられたメンバー間のつながり
この手の作品にないわけがない。
やっぱりありました。
〈機構〉は選んだ人物を徹底的に調べ上げている。
だとしたら、最初の殺人は自殺かもしれない。
手駒として使える人物を選び、仕掛ける。
舌なめずりしながらモニタリングしている主人(ホスト)の
やりそうなことじゃないの。

と、この辺りまでは読んでいて気づいたものの
その後の展開は想像できなかった。

「全滅アリ」は最初から脳裏にちらつき
それもあってページを繰る手が止まりませんでした。

後日談には人を手にかけた人物の
明るくない未来が提示されていました…
そして相変わらず作者は
自分に酔っている愚かな人間に厳しいですね。

登場人物で一番不気味だったのは
どんなときも涼しい顔をしていたお嬢さま・須和名祥子。
結城理久彦に声をかけたのも意図的なものだったのか。
今回の〈実験〉への参加で得た収穫をふまえて開催する
「明鏡庭」
より良質な〈実験〉を主催するつもりでいるらしい。
それはどんなものなのか。
米澤穂信さんは書くつもりがあるのかな。
これより良質なクローズド・サークル、読んでみたいです。

インシテミル

インシテミル

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本

「苦肉の策なんでしょうけど、
夜のルールもどうにもいただけませんね。
クローズドサークル名物
“この中に犯人がいるかもしれないのに
一緒になんていられないわっ!
あたしは部屋に戻る!”
が成り立たない 」

ものすっごく同感でございます^^
こういう女の人、出てきますよね。
わかりやすすぎる死亡フラグ。

 


タグ:米澤穂信
nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 4

びっけ

表紙絵の可愛さに惹かれて手に取り、読みました。(^^;
映画化ですか!
本当だわ、豪華キャストですね。
藤原竜也に綾瀬はるか・・・北大路欣也まで!
楽しみなような怖いような。(笑)

本のほうは、続編・・・うーん、どうでしょうね。
あるなら、殺人ゲームではない設定がいいなぁ。
あっ、それだと「ライアーゲーム」みたいになっちゃうかしら。

お嬢様キャラの彼女には、何となく古典部のえるちゃんを想起させられました。
(^^)v
by びっけ (2010-04-22 00:15) 

miyuco

びっけさん、nice!とコメントありがとうございます!
あの表紙絵はあまりにもミスマッチですよね^^;
続編…あのお嬢さまが主催者なので
きっともっと凄惨なゲームになりそうな気がする。
こわっ!

ホリプロの記念映画がこういう趣向のもので
大丈夫なのか?とちょっと思ったりします。
豪華キャストにするにはやりやすいかもしれないけど。
by miyuco (2010-04-22 22:47) 

ミナモ

miyucoさん、こんにちは。
先程、私も読み終えました^^
これほどクローズド・サークルを意識して作り上げられた空間なのに、
途中からはデス・ゲームに気を取られて最後にようやく、
「ああこれ、ミステリだったんだっけ」と思い出しました…w

あと「圧死」は私も意外でびっくりしました。
こういうのもアリなのかと(笑)
by ミナモ (2010-10-24 13:00) 

miyuco

ミナモちゃん、nice!とコメントありがとうございます!
映画を観てきたのですが…
この本のプロットを何のひねりもなく
順番に描いたらこんなにつまらなくなるのかと
びっくりでした。
米澤穂信の技量を再確認いたしました。

「圧死」、意表を突かれますよね^^
by miyuco (2010-10-25 18:38) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。