映画『パーマネント野ばら』

「恋愛」を全面に出している映画を観にいくのはちょっと…
と思いながらも気になってました。
監督：吉田大八
原作：西原理恵子
脚本：奥寺佐渡子
主演：菅野美穂
という強力な布陣が私を手招きする＾＾

【脚本：奥寺佐渡子】は細田守監督の大好きな近作二本
「時をかける少女」と「サマーウォーズ」を手がけているので
きっと私の好みだろうな、そうだといいなと思いながら
映画館へと足を運びました。

前半は猥雑さに笑ったりしながら観ていて
徐々に主人公の不安定さに不穏な空気を感じ
最後にグッと胸を衝かれました。
ある一点で映画の色が一気に変わった気がした。
それはとてもとても温かくやさしい色でした。

家に帰り、ふと気づいた。
あそこには「さえ子ちゃん」がいたんだ。
大島弓子さんの「バナナブレッドのプディング」で
幼なじみが「涯（みぎわ）におちないように」
ささえていたさえ子ちゃんが映画のなかにいました。
泣けました。

山々に囲まれた海辺の町に一軒だけある小さな美容室
「パーマネント野ばら」
離婚したなおこ（菅野美穂）は一人娘のももを連れて
故郷の街に戻り、母（夏木マリ）の営む店を手伝っている。
女たちはパーマ屋に集まりおしゃべりに花をさかせる。
下ネタ満載＾＾；
なおこの幼なじみ・みっちゃん（小池栄子）
ダンナの浮気に頭を悩ませていて
大ケガするほどのバトルがあっても明るくつぶやく。
「どんな恋でもしないよりましやき」
もう一人の幼なじみ・ともちゃん（池脇千鶴）
何度もダメ男にひっかかったあげく
結婚した相手はギャンブル好き。現在行方不明…

なおこも恋をしている。
高校教師・カシマとの密やかな逢瀬。
しかしそれは…

小池栄子の大きな瞳が雄弁に語っていて素晴らしい。
池脇千鶴の包容力も優しい。
夏木マリ、宇崎竜童、オバチャンたち、とてもよかったです。
惚れてしまうやろっ！って言いたいほど
江口洋介は魅力的だった。役得ですね。

菅野美穂は相変わらず素晴らしい。
恋人といるときの可愛らしさ
娘への眼差しのやさしさ
二つの世界を行き来するあやうさ
さびしさに沈んでいる表情
すごい女優さんです。

私には「大人の恋心」はあまり残らず
違った意味で心にずしんとくる映画でした。

以下、まだご覧になっていない方はご注意を

 

 

「なんでこんなに寂しゅうて寂しゅうてたまらんが？」
ラストまで観てからこのシーンを振り返ると
寂しさの意味がわかる。
夢のなかを漂っているだけなら幸福なのに
なおこは夢から覚めてしまう。
そうしたら孤独感はもっともっと膨れあがる。

それでも、繋いだ手は必要なのですね。

「何度も聞いたよ」
ともちゃんの優しい声と表情
「デート中か」
幼なじみを「ささえている」と思っていた人間と
「ささえられていた」と思っていた人間がひっくり返る
たった一言のセリフ
そのあとの美容室での母とオバチャンたちの表情
映画の色合いが一気に変わりました。

ラストのももに見せるなおこの表情の変化が愛おしい。

【追記】
なおこはもちろんカシマに恋をしていた。
その恋を引きずっている部分も確かにあると思う。
でも、それよりも、何かすがるものが必要になったとき
甘美な恋の記憶が強くよみがえったのではないかな。
すがるものとしては最適です。
だってカシマはなおこを決して傷つけない。

コメント 5

ネジさん、nice!ありがとうございます！
by miyuco (2010-05-25 18:47) 

ミナモちゃん、nice!ありがとう＾＾
by miyuco (2010-05-28 11:26) 

hetianさん、nice!ありがとうございます。
by miyuco (2010-05-28 11:27) 

ちくろ幼稚園･まあじゃんほうろうき辺りからのファンとしては一連のサイバラ作品映像化にフクザツな思いを持つわけですがmiyucoｻﾝのオススメなら観に行こうかナァ？とゆー気に…
by おきざりスゥ。 (2010-06-05 15:02) 

＞スゥ。さん
私は西原理恵子さんとは縁がなく
作品を読んだことは一回もないのです＾＾；
子育て一直線で外界からシャットアウト（笑）
されていた時期にデビューしているからかな。
名前を知ってからも何となくキワモノ扱いしていて
もうしわけないです。

映画「パーマネント野ばら」私は気に入ってます＾＾
原作も読みました。
散文詩みたいな作品でした。
by miyuco (2010-06-05 21:28)