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映画 『告白』 [日本映画]

先に原作を読んでから映画を観ました。
凄い! 
中島哲也監督の手腕は信用できます。
映画は原作のエッセンスを凝縮し
より鮮やかに繰り広げてみせる。

「私の娘が死にました。
警察は事故死と判断しましたが、
娘は事故で死んだのではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです。」
とある中学校。終業式後のホームルーム。
1年B組、37人の13歳の前に立つ担任・森口悠子の
告白で始まる衝撃の物語。
09年本屋大賞に輝いたベストセラー、湊かなえ著『告白』を、
「小説に強く惹かれ、難しいけれど映画にしてみたい」
と、中島哲也が監督・脚本を努めて挑んだ、
誰も見たことのない極限のエンターテインメント。




「告白」という本は「聖職者」という短編が
第一章になっていて(小説推理新人賞受賞作)
第二章以降を加筆して一冊にまとめられています。

セリフだけで成り立っている「聖職者」が素晴らしかった。
緊迫感あふれる完成度の高い短編。
しかし、このスリリングなテイストを持続させることは難しい。
原作は奇をてらう方向に傾いてしまったようです。
人物までステレオタイプに荒唐無稽なつくりで
正直、あれほど絶賛される作品なのかなと疑問でした。

映画は「聖職者」の密度を最後まで失わない。
一瞬たりとも目を離せなかった。

原作同様、教室での教師の告白から始まる。
松たか子が教師を演じています。
あのきれいな声で、聞き取りやすい明瞭な発音で
騒がしい中学生たちを注意するでもなく語り続けます。
無表情で淡々と語っているのに
そこからこぼれでるものが胸に迫ってくる。
「悲しみ」「後悔」「憎悪」「殺意」
演出、役者、共に見事です。

ダークな色彩の映画。
いじめられる者が瞬時にいじめる側にまわる
不安定で凶暴な中学生の教室。
犠牲者を求めて血眼になっている醜悪な子どもたち。
カリカチュアされているにしてもよく描かれている。

そんなバカなヤツらとは違うステイタスにいると
思っている少年A
彼が求めているものはただひとつ。
それを手に入れるための手段を講じただけ。
人の命なんてどうでもいい。
自分の命でさえどうでもいいと思っているのだから。
しかし直接手を下したのは少年B

「私は二人に、命の重さ、大切さを知ってほしい。
それを知った上で、自分の犯した罪の重さを知り、
それを背負って生きてほしい。」

原作での先生は暴走するのみで好きになれなかった。
教育者としての言葉は単なる絵空事としか思えません。
しかし、映画での先生はそうではない。

ファミレスを出たあとの慟哭する姿
「くだらない」
吐き捨てたのは、少年Aに?
復讐の道を突き進んでいるくせに泣いたりする自分に?

「あなたの更生はこれから始まるの」

ラスト、暗転してからのひとことは
復讐の鬼でありながら、
教育者としての魂を捨てきれない自分を
嘲るようでもありました。
人はモンスターにはなりきれない。

自分だけが特別だと思っているバカな中学生が
裁かれることに爽快感を感じてもいい。
我が子かわいさのあまり社会性を見失った親が
破滅するのをいい気味だと思ってもいい。
あんな行為はやりすぎだと嫌悪感を抱いてもいい。
「命」の代価はこれほどまでに大きいのだと
実感してほしい。

一筋縄ではいかない映画です。

以下、蛇足(笑)

 

爆破シーン
原作を読んだとき、これは事実ではないと感じました。
映画を観ても、同じ。
だからこそ少年の心象風景が長く描写されたのだと思う。
心が壊れていくところを。
自分がやろうとした事を他人もやるに決まってる
という安易な発想しかできないから疑ってかからない。

少年は、大量殺人を計画していた。
というより自殺に周りを巻き込もうとしただけ。
またしても命を軽々しく扱おうとしている。
大切な人の命を奪われたときはじめて
それがどれほどの痛みなのか
我が身に置き換えることができた。
彼は代償を払わなければならなかった。

大事なものが消える音は「ぱちん」ではない。
「どっかーん」なんだよ。

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松たか子の演技は、凛々しく、美しく、哀しい

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原作を読んだ感想です。
『告白』 湊かなえ 
http://miyuco.blog.so-net.ne.jp/2009-04-20

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ミナモ

こんばんは。
私、原作は大好き(と言うのも複雑ですが^^;)なんで、この話が映画化と聞いたときは「マジで!?」と本当にビックリ&不安になりました。
題材がアレなものですし、どうなんだろうなァ…と。
けど、miyucoさんの反応がとても良いみたいですし、監督も評判の良い方みたいなので今度観に行ってみます~☆
by ミナモ (2010-06-17 19:11) 

miyuco

ミナモちゃん、こんばんは^^
この本を映画化ってどうなのよ?
って思いますよね。私もそうでした。
でも、映画はとてもよくできていた。
原作が描こうとしたことが
くっきりと浮かび上がり
ストレートに伝わってきたように思いました。
機会があったらぜひご覧下さいませ!
nice!とコメントありがとうございます♪
by miyuco (2010-06-18 19:26) 

miyuco

のむらさん、nice!ありがとうございました。

by miyuco (2010-07-21 19:17) 

miyuco

綺華さん、nice!ありがとうございます。



by miyuco (2010-07-21 19:17) 

miyuco

ぎゃおさん、nice!ありがとうございました。
by miyuco (2010-07-21 19:18) 

miyuco

galapagosさん、nice!ありがとうございました。
by miyuco (2010-07-28 20:08) 

魚河岸おじさん

お久しぶりです
ボクも原作の凄まじさが見事に映像化され
見た人に必ず何かを残すであろう傑作だと思います
ソシテ
女神松さんの演技力
30代にして、円熟されてきました

by 魚河岸おじさん (2010-08-01 15:56) 

miyuco

魚河岸おじさん 、お久しぶりです!
松さんの演技はもう何ていったらいいのか
わからないほど圧倒的でした。
凛々しくてきれいでした。
松さんの舞台「2人の夫とわたしの事情」を
NHKでやっていたのを少し見ていたら
見事なコメディエンヌぶりでかわいくて
う~ん、やっぱりすごい人だと思った次第です。
nice!とコメントありがとうございます♪

by miyuco (2010-08-03 12:06) 

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