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『ふたりの距離の概算』 米澤穂信 [読書]

楽しみにしていた古典部シリーズ第五巻。
おもしろかったです。
「ふたりの距離の概算」
<ふたり>というのは誰と誰のこと?
絶妙な題名だと読み終わった時にわかります。
(古典部のタイトルはみんな秀逸だと思う)

20㎞を走るマラソン大会。
その間に過去のできごとを洗い出し推理する。
ちょっとだけ「夜のピクニック」(恩田陸)みたい。

「ただ走るには長すぎる。
しかし人を理解するのに充分な距離かどうかはわからない。」

謎を解くカギを見つけるために振り返る
過去のできごとにはちょっとした日常の謎があります。
謎解きがおもしろいのですが、それだけでは終わりません。
後になってその前後のたわいもないやりとりに
伏線が仕込まれていたことがわかる。
あれがこうなるのかと意表を突かれます。
こういうところが好き。

折木奉太郎と千反田えるの関係性が
ストーリーに見え隠れしていい感じです。
ほのかな恋愛風味。

「やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことなら手短に」
をモットーとしていた以前の奉太郎だったら
今回のことも里志のように「仕方ないこと」
で終わりにしたはず。
千反田えるに出会い、古典部として活動(?)した時間が
ホータローに変化をもたらしたようです。

秘められた思惑は苦いものでした。
それを知ってしまった奉太郎は
この後、どう動くのでしょうか。

それにしても千反田えるの誤解が
かわいすぎる!

古典部に新入生・大日向友子(おおひなた ともこ)が
仮入部してくる。部員千反田える(ちたんだ える)や
伊原摩耶花(いばら まやか)たちともすぐに馴染み、
このまま入部するものだと思われたが、
ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。
どうやら部室での千反田との会話が原因のようだが、
奉太郎は納得できなかった。
千反田は他人を傷つけるような性格ではない――。
入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、
奉太郎は大日向の心変わりの真相を推理することに! 

以下、未読の方はご注意を

 

 

*
*
*

新勧祭で発動した千反田える嬢の例のひとこと
「わたし、気になります」
推理の結果が導かれたと同時に
危険を察知した彼女がとった迅速な行動
お見事でした。

もし、奉太郎が大日向のトラブルに関わり
手を差し伸べようとしたときに
千反田えるに協力を求めたら
彼女は新勧祭のときのように迅速に動くでしょう。

怯える大日向さんにはこういう正しい人が
怖いのだと思う。


「僕たちは所詮、学校の外には手が伸びないんだ」
最初からどうしようもなかったと福部里志は言う。
しかし奉太郎は間違ってないけれど違うと思った。
「問題はそうしようと思う意志があるかどうか。」

省エネ主義のホータローの今後が気になります。

ふたりの距離の概算

ふたりの距離の概算

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/06/26
  • メディア: 単行本


タグ:米澤穂信
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miyuco

ミナモちゃん、nice!ありがとう!
by miyuco (2010-07-30 18:37) 

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