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『さよなら妖精』 米澤穂信 [読書]

読み終わって胸に残るものは
自分の役割をわきまえ、力を尽くす人の美しさ
背景となっているユーゴスラヴィア紛争の悲惨なニュースが
強く記憶に残っているので、物語で語られている以上に
マーヤの胸中に思いを巡らせてしまいました。切ないです。
この読後感はいつまでも忘れられないと思う。

高校三年生の守屋路行と太刀洗万智(たちあらいまち)が
学校帰りに出会った雨宿りしている女の子。
黒目黒髪のやや幼さの残る容貌、
その中で特徴的な力強い眉。
ユーゴスラヴィアからやって来たマーヤ、17歳。

マーヤとともにすごす時間のなかで
日常の謎があらわれ、解決される。
しかし大きな謎は残された。

…ユーゴスラヴィア?
ユーゴは解体したのに、その前の話?と引っかかる。
だから1991年が舞台なのかと納得。
それが物語の核心へとつながる設定だと
読み進めるうちにわかりました。

ユーゴスラビア社会主義連邦人民共和国
6つの共和国からなる他民族国家。
「7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、
3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国」
「モザイク国家」と表現されていた。

6つの文化があるユーゴスラヴィア。
マーヤは「七つ目の文化」を作りたい。
「連邦」ではない「ユーゴスラヴィア」を造り出すことが
自分の役割だと語る。

それは実現できないという歴史的事実を
私はあらかじめ知っている。
だからマーヤの意志を知れば知るほど切なかった。

解体へ向かってひた走り、危険な状況の祖国へ
マーヤは帰っていく。
「家には帰るものです。」

残された謎とはマーヤが帰った場所。
マーヤはユーゴスラヴィアとしか語らなかった。
しかし紛争の激しい場所とそうでない場所がある。
どの地域に帰ったのか?
一緒に過ごしたときの何気ない会話を思い出し
どうか危険の少ない場所でありますようにと
推理する過程はスリリングでした。

苦い後味。
マーヤが何も残さなかったわけではない。
少なくとも彼女と出会った人々のなかに
何かを残していると信じることでしか救われない。

主人公・守屋の浅薄さが物語にそぐわない気がします。
「マーヤが引き連れてきた世界の魅力に幻惑され」
「“劇的(ドラマティック)”にすがりたかっただけだ。」
過去の自分を分析するがマーヤの望むことを
理解できたわけではなかった。
それを太刀洗万智(たちあらいまち)に指摘されます。

友を守るために、つらい事実をひとりで呑みこんでいた
太刀洗万智の凛々しさが際だちます。
(守屋の目は節穴なの?)

1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、
謎に満ちた日々への扉を開けた。
遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。
彼女と過ごす、謎に満ちた日常。
そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。
覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、
『哲学的意味がありますか?』
そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。
忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2004/02
  • メディア: 単行本

創元推理文庫には、全て英題がついています。
文庫化されたときにつけられたタイトルは
「THE SEVENTH HOPE」
感想を書き終えてから知りました。
「HOPE」とつけたんですね。

米澤穂信が太刀洗万智を気に入っていると知って
「さよなら妖精」に興味を持ちました。
確かに魅力的です。

2007年当時の米澤穂信への100の質問
http://www.pandreamium.net/nowadays/100.html

Q24:今までの米澤さんの作品の中で
気に入っているキャラクターは何ですか? 
男女一人ずつ前後程度のテキトーさでお願いします。

A:難しいですね。
男は福部里志(〈古典部〉シリーズ)、
女は太刀洗万智(『さよなら妖精』)、としておきます。

…福部里志はちょっと意外。
100の質問、おもしろかったです^^


タグ:米澤穂信
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miyuco

hetianさん、nice!ありがとうございます!
by miyuco (2010-08-21 18:57) 

miyuco

ミナモちゃん、nice!いつもありがとう!
by miyuco (2010-08-21 18:58) 

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