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『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』 村上春樹 [読書]

『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです
村上春樹インタビュー集1997-2009』

訥々と誠実に語る村上さんの姿勢に
とても好感が持てます。

くり返し同じような質問を受け
村上さんもいつも通り真摯に答える。
外国の方のインタビューがおもしろい。
単刀直入に切り込んできます。

古川日出男が聞き手のインタビュー
るつぼのような小説を書きたい」(『1Q84』前夜)
とてもざっくばらんな雰囲気で語っていて
リラックスした村上さんの言葉がおもしろかった。

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「僕はweird story(奇妙な物語)を好んで書きます。
どうしてかはわからないけれど、
そういうweiednessにとても惹かれるんです。」
P21

村上春樹の描くweird storyに惹かれる読者が
世界中に存在し、今このときもその世界に心奪われている。

「少なくとも最後まで歩かなかった」 
墓石にはそう刻んでもらいたい。
(P429)

その願いが叶えられますように(ジョークかもしれないけど)
そしてそれがずっとずっと先でありますように。
まだまだ新作を読みたいです。

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以下、印象的な言葉を書きとめてみる。

2003年フランス 聞き手 ミン・トラン・ユイ
「書くことは、ちょうど、目覚めながら夢見るようなもの」
このインタビューも好きでした。

「近づきやすいが、とらえがたい―。
心に響く繊細な村上春樹の作品は、いつも魅力的だ。」

「あなたはこう言明されたことがあります。
物語を書きながら自分自身の物語を探している、
表面を掘り下げるのは
深いところにある自分の魂に達するためだ、と。」

村上「ええ。書くことによって、
多数の地層からなる地面を掘り下げているんです。
僕はいつでも、もっと深くまで行きたい。
ある人たちは、それはあまりにも個人的な試みだと言います。
僕はそうは思いません。
この深みに達することができれば、みんなと共通の基層に触れ、
読者と交流することができるんですから。
つながりが生まれるんです。
もし十分遠くまで行かないとしたら、何も起こらないでしょうね。」
P155

「僕たちはいつも、たがいにすれちがっています。
相互に理解しあうことはできますが、
一般的に言って、距離は残る。
交差し別れながら、前進を続け、
出会いの素晴らしい記憶とともに生きつづけるんです。
ちょうど二基の人工衛星が、
たがいの軌道を宇宙空間のなかで追いかけあうようにね。
僕たちはふれあい、結びつき、思い出を共有して別れる。
この思い出は、僕らの心を温め、勇気づけるものです。
本質的なのは、この点にあります。
良い物語や良い本というのは、そのために存在するんです。」
P166

 

 

 

古川日出男が聞き手のインタビュー
るつぼのような小説を書きたい」(『1Q84』前夜)
とてもざっくばらんな雰囲気で語っていて
リラックスした村上さんの言葉がおもしろかった。

「当時はね、作家と批評家と編集者が
サークルみたいなものを組んで、
機能しているような時代だったんですよ。
だからどっかのサークルの属して、ポジションを持っていないと、
もう今じゃわからないだろうけど、けっこうな切迫感というか、
孤立感を感じざるを得ないところがあった。」
p455

「海外で創作活動を始める具体的な決断のきっかけは」
という問いに答えていくつかある理由のひとつとして
「文壇」(今ではもう死語?)での居心地悪さを語ってます。

「友達じゃなければ敵」というような
当時の「文壇的な世界」に敵対視されていたのは
「けっこうきつかった」のですね。

「ひとりでいる」ことが許されなかった閉塞感を
私はあの頃の一般社会でひしひしと感じていました。
今はだいぶラクになったような気がするけれど
同調圧力がなくなることはきっとないでしょう。

日本の既成の文学システムを無自覚に壊してくれて
本当によかったという古川日出男に
好きなことをやりやすいようにやっていただけで
戦略的な考えは特になかったのに
自分にだけ風当たりが強くて袋叩きにあってきたというのは
「なんかやっぱり釈然としないな」
と口をとがらせているような村上さんにちょっと笑いました。

「ねじまき鳥クリニクル」が出版された頃であっても
読者以外に味方のいない孤立無援な状況だったとは
私はまったく知りませんでした。

 村上「でも僕は、まわりのみんなに嫌われていると思って
ずっとやってきたから、なんか急にそんなふうに
褒められたりするとけっこう居心地悪いんだけど(笑)

古川「いやいや。僕がデビューした頃からみると、
ずいぶん風向きっていうか、雰囲気は変わったと思いますよ。
最初は本当に、僕がインタビューで問われて、
「好きな作家は村上春樹です」って言うと、
みんなは「えっ」っていう顔をしてたけど。

村上「なんか禁忌語みたいですよね。
文学的フォーレター・ワード(笑)」

古川「なんでこの人は公言しているんだ、
みたいな雰囲気だったんだけども、
今はもう、まったく変わりましたね。
状況は素晴らしく真っ当になってる、と思います。

村上「そうですか。それはよかった。なによりです(笑)」

村上さんは「分厚い小説」が好きだそうです。
たしかに…「1Q84」も重かった。

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夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


タグ:村上春樹
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コメント 3

sknys

miyucoさん、こんばんは。
『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』は未読ですが、
「村上春樹ロングインタビュー」(季刊誌「考える人」no.33)は『1Q84』の関連部分だけ拾い読みました。

「リトル・ピープル」の存在は作者にも分からないと仰る。
文藝評論家や村上おたくが必死に分析しても意味ないような気もします^^;
「Book 4」はないけれど、「Book 0」はあるかもしれない?
主人公2人は深田保(ふかえりの父親)と緒方静恵(柳屋敷の老婦人)で、どうでしょうか?
by sknys (2010-10-30 23:51) 

miyuco

だいだらぼっちさん、nice!ありがとうございます!

by miyuco (2010-10-31 18:46) 

miyuco

sknysさん、こんばんは。
村上さんは評論家を信用してないみたい。
「リトル・ピープル」が何であるか
正解はないのでしょうけれど
想像してみるのは楽しいです。
読者に対してはどんなふうに解釈してもらっても
かまわないとかなり鷹揚なのでありがたいです。
ふかえりの父親に関してはもっと知りたいと
私も思います!
コメントありがとうございます。
by miyuco (2010-10-31 18:52) 

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