SSブログ

『麒麟の翼』 東野圭吾 [読書]

安心して読める作品でした。
おもしろかった。
読み終わったあとに残るこの感覚。
物言わぬ人物の心情が解き明かされ
鮮やかに物語全体をつつみこむような。
胸が熱くなります。

高速道路の下にある石造りの美しい橋「日本橋」
二体の麒麟像が置かれた装飾柱が中程にある。
その台座にもたれかかったまま男は動かない。
胸にはナイフが突き刺さっていた…
日本橋を舞台に加賀恭一郎が真相に迫る。

被害者の遺留品に加賀刑事は目をつける。
それは「甘酒横町」にある手作り工芸品の店で
扱っている品だった。
調べていくとどうやら被害者は
日本橋界隈を歩きまわっていたらしい。
何のために?

加賀刑事が足で稼ぎ積み上げた街の知識が
『新参者』に引き続き今回も事件を解決に導きます。
「折り鶴」「七福神」
手堅い展開、うまいです。

加賀たちが妥協せずに真実を追い求めたからこそ、
事件に関わった人たちの思うところが明らかになり
残された者たちが光を受け取ることができたのでしょう。
彼らは一歩を踏み出します。

それにしても青柳武明と八島冬樹は
なぜ死ななければならなかったのだろう…
特に八島が気の毒でたまらない。
やりきれない気持になります。

加賀刑事の渾身の一喝は心に響きました。

家族のあり方を問うた『赤い指』と
人情を描くことに挑んだ『新参者』の
両方の要素を取り入れられればいいな、
と贅沢なことを考えていました。
 「講談社BOOK倶楽部」より引用

「赤い指」と似ているような気がしたけれど
それは作者が意図していたところだったのですね。

以下、未読の方はご注意を
 

*
*
*

死を目前にした人間の不可解な行動は
メッセージであることが多い。
それが愛する人へ残したものであれば
理解されないのは悲しいことです。

「勇気を出せ、真実から逃げるな、
自分の信じたことをやれ」

息子は正しく受け取りました。
「一人の人生をめちゃくちゃにしておいて、
平気で生きてるなんて、人間失格です。」
本当のことを話してきちんと罰を受けよう
そうしないとたぶんまともな人間になれないと思う。

「死を間近に迎えた時、人間は本当の心を取り戻します。
プライドや意地といったものを捨て、
自分の最後の願いと向き合うんです。
彼等が発するメッセージを受け止めるのは
生きている者の義務です。」P240

金森登紀子の言葉は加賀の心を動かしたのでしょうか。

彼女がまだ加賀と関わっていたのは驚きでしたわ。


麒麟の翼 (特別書き下ろし)

麒麟の翼 (特別書き下ろし)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/03/03
  • メディア: 単行本

 

どうしても阿部寛さんと溝端くんが頭に浮かんでしまう…
絶妙のキャスティングですものしかたないか。


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1