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ラストレター 岩井俊二 [日本映画]

ラスト、泣きました。
苦難に満ちた人生を精一杯生きたのだとわかります。
それでも生きていることを選べなかった。
彼女の胸の内が流れ込んできたような気がしました。

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裕里の姉の未咲が、亡くなった。

裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美から、
未咲宛ての同窓会の案内と、
未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。
未咲の死を知らせるために行った同窓会で、
学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。
そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎と再会することに。
勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。
裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。

029 点線青.gif


大きなわんこ、いい仕事してました。
物語を上手に動かしてた。

古い校舎での出会いは
過去と現実がリンクしたようで
夢みたいにきれいだった。



初恋の記憶、ノスタルジックな感傷で
妹の裕理は姉に成りすましているのだと
見ている私は思った。
しかし、それだけではないと徐々にわかってくる。

受け取る側の鏡史郎にとって、
その手紙は裕理が思っている以上の意味を持つ。

手紙のやりとりがそれぞれの胸の内をざわつかせる。
踏み出せなかった鏡史郎が動きだす。
そこにあるのは打ちのめされる現実と
思いがけない事実。


「おまえはなあ、あいつの人生に
何ら影響を与えてねえんだよ」
「一人称で書くなよ」

阿藤はこう言い放ちます。
そうだったのでしょうか。





以下の駄文は、未見の方にとっては
要らぬ情報になってしまうのでご注意を。

いまどき流行らない長文です。

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Love Letter 岩井俊二 [日本映画]

1995年公開の言わずと知れた名作。
なぜか見る機会がなかった。

岩井俊二監督「ラストレター」の前に
「Love Letter」を見ました。

失礼ながらもっとセンチメンタルで
甘ったるい話かと思っていた。

甘ったるくないけれどきれいな物語。
観てみたらこの作品が
こんなにも愛されている理由がわかりました。
わたしも大好きです。


もうこの世にいない藤井樹(ふじいいつき)が
同姓同名のクラスメイトだった藤井樹のなかに
あざやかによみがえる。
かつて放たれて迷子になっていた思いが
時を超えてたどりつく。

藤井樹のなかに彼(亡き婚約者)は生き続けている。
博子の心は少しづつ整理されていく。
少しづつ動き出す。


中山美穂の横顔がきれい。
二年前に婚約者を亡くした<博子>
婚約者と同じ名前の<藤井樹>
二役をくっきりと演じ分けています。

彼は今どこにいるかわかりません。
ただ時々思い出すんです。
どこかで元気でやってるかなって思うんです。
そんなつもりで書いた手紙でした。
だからどこにも届かなくてよかったんです。

博子の手紙は思いがけず<藤井樹>に届き
謎めいた手紙を受け取った<藤井樹>は
軽い気持ちでおもしろがり、返事を書く。

亡き婚約者の中学のアルバムから写し取った住所は
同姓同名のクラスメイトの女子のものだった。
真相がわかってからも博子と藤井樹のやりとりは続く。

樹は博子の求めに応じ、中学の時の思い出を綴る。
「あんまりいい思い出とは言えないものばかりなんです」


自転車置き場での自転車のライトに照らされたふたり。
図書室での「藤井樹ストレートフラッシュ」

樹は甘やかな思い出だとは露ほども思っていない。
しかし博子と映画を見ている観客にはわかる。
この時点で樹は彼が死んでしまっていることを知らない。

訪れた母校で樹の死を知ることとなる。

「死んだでしょ。二年前に。山で遭難して。」

告げられた時の樹の表情は逆光で見えない。
次のシーンでは先生に見送られて自転車で帰っていく樹を
校内から撮っている。

ここで樹の内面は一気に色を変えたのだと思う。
映画的には表情のアップがあるはずなのに
そういう流れではなかった。

私はどこかひっかかって見ていた。
後で気づいた。
昔読んでいた少女マンガ、
もっと言えば大島弓子さんの作品で
こういうシーンをよく見ていた気がする。
風景からモノローグへと流れる。
ここでのモノローグは父の葬儀の場面。

ラスト5分、思いがけない訪問者によって
もたらされたサプライズ。
藤井樹から藤井樹へ、
時を超えて届けられたラブレター

彼女の記憶はもう一度色を変えたのではないでしょうか。

直接的ではないけれど
博子が亡き藤井樹の想いを届けたのかな。
博子はそのことを知らないけれど。





谷底からきこえる松田聖子の歌は壮絶です。


范文雀さん、きれい
「サインはV」のときと美貌は変わらない。
酒井美紀、柏原崇、かわいい!

岩井俊二監督が話の中で
大島弓子さんの名前を出している記事を読みました。
びっくり。











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『ツナグ 想い人の心得』 辻村深月 [読書]

「ツナグ」の続編。
一生に一度だけの死者との再会を叶える使者「ツナグ」。
長年に亘って務めを果たした最愛の祖母から
歩美は使者としての役目を引き継いだ。
7年経ち、会社員として働きながら依頼を受ける彼の元に、
亡き人との面会を望む人々が訪れる。


<プロポーズの心得>
前作ツナグのあの子はどうなってしまうんだろうと
ずっと心に残ってた。
彼女が背負っているものが
少しだけ軽くなったかなと思うと
この最初の短編を読んだだけで胸がいっぱい。

ツンデレ少女が出てきた時は
歩美くんはどうしちゃったのと心配しました。
TV好きの子生意気な杏奈ちゃんは
歩美のいい相棒(?)ですね。


親しい人の悩み苦しむ姿を前にして
歩美はツナグの力で死者と再会できたら
何らかの答えが出るのではないかと考える。
彼女の力になりたいと。
しかし彼女は悩み苦しみながらも
自分で進みべき道を模索する。

ツナグにたどり着かなくても
苦悩の果てに答えを出す人たちがいる。
改めてそれが描かれているところが
とても好きです。

表題作<想い人の心得>
お嬢さまの喜ぶ顔を見ることができてよかった。
華やかな景色がパッと広がって
この本の余韻をあざやかに彩ります。




ツナグ 想い人の心得

ツナグ 想い人の心得

  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 単行本


タグ:辻村深月

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