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『二百十番館にようこそ』 加納朋子 [読書]

立ち止まっていたニートたちが、
おっかなびっくり歩き出す前の「人生の夏休み」が
青い空と海のもとで始まります!


おもしろかった!
二と十でニートということだそうです。
二百十番館すなわちニートの館。
亡くなった伯父が残してくれた遺産とは
孤島に建てられた館。
実は研修センターとして使われていた建物。
人口わずか17人の小さな離島。
親は自宅を売却して消息不明。
退路は断たれた。
しかし働くという選択肢はない。
金銭面をどうクリアするか。
自分と似た者同士のニートだったら
一緒に暮らせるかもしれないと考え
入居者募集をかける。
やってきたのは訳ありの人たち。



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加納朋子さんからのメッセージ
「読み終えた後、「ああ面白かったな」と
思ってもらいたいなと、
そして主人公たちが
「駄目なりにもよく頑張ったね」と
言ってもらえればと思いました。
現実はままならないことばかりですから、
せめて物語ぐらいはと、
全方向に大団円のめでたしめでたし、を目指しました。
 著者が語る より引用

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めでたしめでたしの話は大好きです。

ネトゲ廃人の自宅警備員、
要するに無職のニート
ハンドルネーム「刹那」は
親に捨てられた。


親としては捨てたというより
強制的に居場所を変えてあげたのかな。
現実ではこんなにうまくいかないと
わかっているからこそ
がんばって自分の世界を変えようとする人が
報われる物語が愛おしいです。


この本を読んだ知り合いは
ゲームに無縁の人なので
オンラインゲーム「ES」の説明で
挫折しそうだったと言ってました。

う~ん、理解するのはたいへんかもしれないけど
理解してもらうとこの物語のやさしさが
より一層胸にしみると思います。

七色の花弁を持つ魔法の花畑に佇む
<聖職者>のアバターがせつない。


二百十番館にようこそ

二百十番館にようこそ

  • 作者: 朋子, 加納
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: 単行本







我が家の次男が
コロナでの自粛期間を乗り越えられたのは
オンラインゲームのおかげです。
新幹線の距離に異動になった彼は
リアルの友人たちと会えなくなったけれど
ゲームを共に戦いながらのおしゃべりで
息詰まるような日々から救われたみたい。

幼稚園の長期休暇に外に出られない子どもたちが
「あつまれどうぶつの森」で待ち合わせして
一緒に遊んでいると聞いたことがあります。


ご近所の息子さんも学生時代には
それほどゲームに興味のないタイプだったのに
社会人になってからゲームで集まって
友人たちとわいわいやるのが楽しくなったそうです。


自粛生活にインターネットがあってよかったと
思った次第でございます。


わたしは「トロとパズル」をがんばってます。
ダンナさんはなぜか「ポケモンGO」を始めたみたい。
スマホをチラッと見ると
フィールドマップが表示されているか
あるいは捕獲中。

そしてこんな画像を送ってくる。
室内でわんこと共存するリザードン^^



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タグ:加納朋子

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『きたきた捕物帖』宮部みゆき [読書]

宮部さんの新たなシリーズの幕開けです。
おもしろかった。

16歳男子が主人公なので
堅苦しい言葉遣いが少なく
現代風の言い回しも多く
読みやすいです。

「桜ほうさら」の物語と
地続きになっています。
富勘長屋の「笙さん」が住んでいた部屋に
北一は住むことになりました。

しょっぱなからフグ毒にあたって
あの世にいってしまった親分が
いい男で女たらしで弁が立つという
なんともかっこいい男だったそうで
折に触れ話の中にでてくる姿も魅力的です。
千吉親分の話、もっと読みたいです。

魅力的な親分の連れ合いが
いい女なのは当たり前。
盲目ながらも
それを逆手に取ったような勘の良さと
深い知性で北一を助けるおかみさん。
朱房の十手を手にできるのはおかみさんだけ。

「亡き千吉親分の名代である寡婦の松葉が、
親分の十手を掲げて聞き取った白状だ。」


北一は周りの人に恵まれていますね。

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まだ下っ端の見習い岡っ引きの北一(16歳)は、
亡くなった千吉親分の本業だった文庫売り
(本や小間物を入れる箱を売る商売)
で生計を立てている。
やがて自前の文庫をつくり、
売ることができる日を夢見て……。
北一が、相棒・喜多次と出逢い、
親分のおかみさんの協力を得て自立し、
事件や不思議な出来事を解き明かしていく、
優しさあふれる捕物帖。

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表紙の屋根に乗っている男性が
なかなか登場しなかったのですが
もうひとりの「きたさん」だったのですね。


喜多次の素性は謎めいています。
欅屋敷の主も訳ありな感じです。

続きが気になります。
楽しみが増えてうれしいです!

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きたきた捕物帖

きたきた捕物帖

  • 作者: 宮部みゆき
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: 単行本

タグ:宮部みゆき

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『ミッドナイトスワン』 [日本映画]

美しいバレリーナを堪能できました。


苦難に満ちた日々のなかに美しい白鳥が舞い降りた。
凪沙はいちかの姿に
成りたかった自分を見つけたのかな。
そして幼い白鳥を羽ばたかせるために身を削る。


悲しい最期を迎えるけれど
観終わってわたしに残ったのは
悲しみよりも、
よかった凪沙は報われたんだねという
救いが残るような
じんわりと温かいような感情でした。

ラスト、見えない凪沙が見ているのは
海辺にいるこども。
女の子の水着をつけている。

凪沙はいちかを羽ばたかせることで
自分を取り戻すことができたのかな


凪沙は一果に赤い靴を履かせ

一果は羽根の髪飾りに姿を変えた凪沙と共に

世界へと羽ばたいていく。


すさんだ目をしていた凪沙が
踊るいちかをはじめて見た時のまなざし。
喜びに満ちたまなざしが強く印象に残りました。
生き返ったような輝きでした。


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いちかを支えるために

忌み嫌っていた姿に戻ってまで

お金を稼ごうとする。

「頼んでない!」と泣き叫ぶいちか。

きっと今まで自分の意思を尊重して貰ったことなんて

なかったのでしょう。

同じような思いを抱いていた凪沙にはわかる。

いちかを抱きしめる凪沙の目は慈愛に満ちている。


草彅剛の目の演技は本当に凄い


物理的に女性になれば解決すると
行動を起こした凪沙に
一果の母は唾を吐きつける。
そこから東京に行くまでのあれやこれやが
すっぽり抜けてるのが解せない。
そのあとの劇的な展開に目を奪われてしまうけれど
そこら辺が弱いような。



新宿のニューハーフショークラブの
ステージに立っては金を稼ぐ
トランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛)は、
養育費を当て込んで
育児放棄された少女・一果(服部樹咲)を預かる。




この映画を観ようと思ったのは
山岸凉子さんのコメントを読んだから。


「とにかく草彅さんの演技が圧倒的!!
こんなすごい俳優だったとは。
その昔、厩戸王子を彼にやってほしいと思っていました。
その意味では、私の目に狂いはなかったのですね。
そして吹き替えなしのバレエシーンの美しさ。
バレリーナ女優、服部さんの誕生がうれしい!
あと、真飛さんのバレエ教師にホッとしました。」


…作者に異論を唱えるのは愚かなことですが
わたしの厩戸皇子はちょっと違う…


「ミッドナイトスワン」のなかには
山岸凉子さんの作品「テレプシコーラ」の
印象的なエピソードを彷彿させるものがあります。

一果のバレエ仲間「りん」
足を痛めてバレリーナへの道を閉ざされる。
監督はあの美しい転落シーンを
撮りたかったのでしょうね。

「この子にはバレエしかないんだから」
りんの母は娘の価値はそれしかないと決めつける。
この母もバレエを踊る娘に自分を重ねている。
ある意味、凪沙と同じではないの?


素晴らしい音楽だと思いながら聞いていたのに
クライマックスの音階が「戦メリ」みたいで
わたしの頭に余計な映像
(映画・戦場のメリークリスマスのイメージ)
が紛れ込んできてしまった。
残念でした。

宣伝では「母性」が強調されていたけれど
「自己実現」の物語という色合いが強いと
わたしは思いました。


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タグ:SMAP

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