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ドラマ『お別れホスピタル』 [TV]

『お別れホスピタル』
人生の最後を過ごす療養病棟が舞台です。

わたくし事ですが二か月前に老衰で母がなくなったばかり
二年前には療養病棟に一年半ほど入院していた父を見送りました。
あれやこれやの感情がよみがえって、
このドラマに見入ってしまうわけです。

*

私たち家族が急性期病院からの転院先を探しているとき
こんなことを言われた
「お父さまのように頭がしっかりしている方には
ここは、おつらいかもしれませんよ」
そう言われても父には入院してもらうしかなかった。
例の流行り病のせいでほとんど面会できなかった。
看護師さんからは「よくお話ししてくれますよ」と聞いていたけれど、
衰えていく身体とひとりで向き合うのは
しんどいことだったのではないかと思ってしまう。
考えても本人がどう感じていたかなんてわかるわけがないし
あちらの世界に後から引っ越していった母と
なかよく喧嘩していてくれるといいなと願うばかりです。

*

『お別れホスピタル』では
患者さんと家族のさまざまな事情が描かれています。
ベテランの役者さんたちがすごすぎて
演技合戦を見ているようです。
泉ピン子、関根恵子、木野花、樫山文江
静かでおさえた演技の繊細な表現には見惚れてしまいます。
メインキャストの岸井ゆきの、松山ケンイチは
もちろん素晴らしい。

キム兄(木村祐一)の演技に胸を打たれるとは思わなかった。
「今、お前が見てるこのオレは、未来のお前や」
自分と似た境遇の若い人が
人生の岐路に立っていることがわかるから
心の底から渾身の力を振り絞って語りかける。
その言葉には凄味があったけれど
表情には後悔の念にさいなまれ続けている苦しみが
にじみ出ていました。

*

2月17日三話放送後の松山ケンイチの投稿がうれしかった



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眠り続ける患者さんを演じる大後寿々花という名前に
なにかひっかかったけれど思い出せなかった。
そうだった、大好きな木皿泉脚本のドラマ
『セクシーボイスアンドロボ』のふたりだった!!
コメント欄にはセクロボを愛するひとたちの言葉が
あふれていて胸が熱くなります。

セクロボ大好きだった。
松山ケンイチ主演作では
映画『ウルトラミラクルラブストーリー』が大好きでした。
津軽弁をまくしたてる主人公が魅力的だった。
(あのギュイーンっていう音楽は大友良英だったのね)


『ウルトラミラクルラブストーリー』の感想→ 

『セクシーボイスアンドロボ』の感想→ 

あの頃はがんばって感想書いてたな・笑



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『青瓜不動』宮部みゆき [読書]

 


行く当てのない女達のため土から生まれた不動明王。
悲劇に見舞われた少女の執念が生んだ家族を守る人形。
描きたいものを自在に描ける不思議な筆。
そして、人ならざる者たちの里で育った者が語る物語。
恐ろしくも暖かい百物語に心を動かされ、富次郎は決意を固める──。

 


「青瓜不動」

気丈なお奈津の物語から生まれた“うりんぼ様”
うりんぼ様は臨月の産婦であるおちかに
お力添えしてくださるという。
おもしろかったです。
しかし、おちかのお産を助ける手段が
なぜ富次郎のがんばりなのか
釈然としない気持ちが残ります。

「だんだん人形」
この世のどんなものよりも、尊いのは人の念だ。
人が心に思うことだ。
しかし、この世のどんなものよりもおっかねえのも、
また人の念じゃぞ。

これは繰り返し百物語の中で語られていることですね。

幕府の目が届かない差配地で起こる悲劇
読んでいてつらかった。

「自在の筆」
絵筆にまつわる怪談


「針雨の里」
語り手は「双眸が凛々しく澄んでおり、口元にかすかに甘さがある」

御劔山(みつるぎやま)の狭間村(はざまむら)の
大人たちの面差しを受け継いでいるようです。
楽園は失われてしまいました。
いったいどれほどの寄る辺ない子どもたちが
狭間村で救われたことだろう。

富次郎の絵筆を捨てるか否かの苦悩は
わたしにはあまり響いてこなかったです。


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青瓜不動 三島屋変調百物語九之続

青瓜不動 三島屋変調百物語九之続

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/07/28
  • メディア: 単行本




タグ:宮部みゆき

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『777(トリプルセブン)』 伊坂幸太郎 [読書]

おもしろかった

増えつづける登場人物
積みあがっていく死体
どこまで増えていくんだと思いながら読んでいきます。
死体を処理する有能な二人組「マクラ」と「モウフ」
ホテル内をちょこまかと動き回りながら
きっちりと仕事するふたりがとてもいいです。

「でもさ、あちこちに死体があるなんて、
このホテル、どうなっちゃっているんだろう」
「疫病神がいるのかもな」


やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。
通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、
超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという
「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。


天道虫は業界の有名人ですね。


「あれは、ほら、天道虫だよ。E2の生き残り」
「ああ、あの。幸運の、天道虫か。それで見たことあったのか」
何人もの業者が命を落とした上に、
とうに引退したと思われていた二人組まで乗っており、
大変な騒ぎになったらしいが、命を落とすことなく生き延びたのだから、
実力はもちろん運にも恵まれているのだろう、と業界で噂されていた。

ついているのかついてないのかわかんない天道虫は
ホテルから出ようとしたエレべーターで
見知った男と出くわしたことで望まぬ状況に陥ります。
簡単で安全な仕事なはずだったのに

時を同じくして、そのホテルには
驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。
彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。

元国会議員の「蓬(よもぎ)」が秘書とともに
ホテルでライターの取材を受けている。
世間からはヒーローのように思われているヨモピーだが
いかにも胡散臭い
と伊坂幸太郎の愛読者は思うはず。
どんなふうにストーリーに絡んでくるのか
わくわくしながら読みました。

何本もの糸がより合わさり、たどりついた結末は
そうきたかって感じで読書の醍醐味を感じます。

エピローグのチーズケーキ!

*

*

*


以下、未読の方はご注意を


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