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『三月のライオン』 6巻 [コミック]

不思議だ ひとは
こんなにも時が 過ぎた後で
全く 違う方向から
嵐のように 救われる事がある

「ありがとう」「君はぼくの恩人だ」「約束する」

5巻はそんなふうに終わりました。

ひなちゃんのつらい状況に
読んでいる私も胸がはりさけそうになる。
6巻になっても事態が収束する気配すら見えない。
羽海野さんはきっとギリギリと歯を食いしばり
身を削るようにしてこれを書いているのだと思う。

ひなをバックアップする人がいることだけが救いです。
しかし、だからといってひなが傷つけられる状況が
なくなるわけではない。
つらいですね。

そして子どもを持つ私は
あかりさんの気持ちもよくわかる。
「何でもっと上手い事できなかったの」
「正義なんてどーでもいいから逃げて欲しかった」
そんなふうに思ってしまう自分を責める。
おじいちゃんのようにひなに言ってあげられなかった。

「それは俺だってそう思うさ“他人の家の子”より
“自分の家の子”の安全を考えてしまう
―そりゃ当たり前だ みんなそうだ」
でも苦しんでいるひなにどうしてそんな事したんだ
なんて言ったら居場所を失ってしまう。
「おっかねえ所」で友だちを助けようとしたひなの
「勇気」とか「正義」を褒めてやるべきじゃないのか
とおじいちゃんは言います。

あかりだってわかっているはず。
でも「辛い目にあってほしくない」というのが
まず最初に出てきてしまう。
「なんでもっと上手い事できなかったの」
これは私自身が何度も子どもに言いかけた言葉です。

そして私が子どもだった頃、
母に言われ続けたことでもあります。
(ひなちゃんとはシチュエーションが違うけれど)
心が暗くなる言葉です。

零がひなに救われたように
当時の私も時を超えてこの物語に救われます。
零もひなもそして過去の私も精一杯やったのだから。

修学旅行の予定表を見て零はすぐにわかる。
一番苦しいのはどこなのか。
学校でずっと一人でいたからひなの苦境がわかる。
突然あらわれた零を見て
ひなはどれほど嬉しかったでしょう。

零は約束をひとつ果たしましたね。

私もひなの勇気と頑張りを心から讃えます!

*
*
*

二階堂がとてもとても心配です。。。

ひなちゃんの担任さん、どうにかならないのかな。
零は信頼できる先生に巡り会ってよかったね。

3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)

  • 作者: 羽海野チカ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2011/07/22
  • メディア: コミック

修学旅行でひとりになるって本当にきついです。
(経験者は語る)

私は小学六年生の林間学校の前に
過敏性大腸炎になりました…

「不思議だ ひとは こんなにも時が 過ぎた後で
全く 違う方向から 嵐のように 救われる事がある」

いろいろと問題ありだった私には
この言葉の意味が痛いほどよくわかる。
浴びるように読んだ少女マンガに
時が過ぎた後でどれほど救われたことか。
そしてなんとか今日まで生き延びたわけで。

 

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タグ:羽海野チカ
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羽海野チカ原画展 ~ハチミツとライオン~」 [コミック]

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「羽海野チカ原画展 ~ハチミツとライオン~」が、
8月6日より西武池袋本店にて開催されることが決定した。

展示会では、「ハチミツとクローバー」と
「3月のライオン」を中心に
150点以上の原画を展示。
「ハチクロ」単行本未収録の原稿や、
初公開となる「3月のライオン」の原画も披露される。
また羽海野がキャラクターデザインを手がけた
アニメ「東のエデン」関連の展示も。

「羽海野商店街」と称した販売エリアでは、
単行本や雑誌に加え、イベント限定のオリジナルグッズや
複製原画も用意される。
さらに「羽海野先生のお部屋エリア」では、
羽海野が百数十冊所持するというアイデア帳の
一部を公開するほか、作品制作に使われる道具の展示も。
また「3月のライオン」ができるまでの手順を原画で紹介。
過去に類を見ない大規模な羽海野の原画展、
会期が短いのでファンは忘れずに予定を空けておこう。

コミックナタリー より
http://natalie.mu/comic/news/51834

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8/8に池袋西武へ出かけました。
そして迷ったわけで。(二年半ぶり二度目)

12時過ぎでしたが入り口で並ぶことはありませんでした。
しかし、原画の前の人の列がなかなか動かない。
みなさん、ゆっくりとしっかりとご覧になっている様子。

男性ひとりの方、私のように中高年の女性
親子連れなど、もちろんメインは若い女子だけれど
さまざまな人たちが訪れていました。

羽海野さんは絵を描くのが本当にお好きなのだなと
改めて感じました。
丁寧に描かれたきれいな色づかいの原画の数々。

入り口のそばには漫画家さんや著名人の色紙がありました。
よしながふみや一条さゆりの原画(?)まで見られるなんて
お得な気分。

「ハチミツとクローバー」のスピンオフ作品の原稿が
一話まるまる展示されているあたりが最も人が動かなかった場所。
まだ単行本に収録されてないので、これは必見です。
山田の幼なじみの一平が幸せそうでよかった。
最初とラストのアイテムの使い方とか、
羽海野さんの短編はやっぱりいいな~
そして山田を前にした野宮があいかわらずかわいい。
13日からは別のスピンオフに展示が変わるということです。
…う~ん、もう一回出かけるのはムリだわ。行きたいけど。

ネームの制作過程が展示されてました。
削りに削り「スベスベ」にする作業。
繰り返される作業の果てにぎゅっと凝縮されたものが
ひとつの作品として世に出されるのですね。

「三月のライオン」手紙キャンペーンの原画もありました。
7/22朝日新聞の全面広告、我が家に届いたのは零くんでした。
心に染みいるとてもすてきな手紙がイラストに添えられています。

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クリックすると大きくなります。

その他の種類の広告はこちらで見ることができます。
http://3lion.younganimal.com/vol6/award.html


2008年12月に萩尾望都原画展が開催されたのも
池袋西武の同じ場所だったなと思いながら向かったのですが
羽海野さんもTwitterでそのことに触れてました。

私が行った8月8日には羽海野さんも会場にいらしていたようです。

以下、Twitterでの文面

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『嵐』 in 朝日新聞 [コミック]

朝日新聞の朝刊を読んでいたら
広告のページで「嵐」が特集されていた。

「ARASHI Meets MANGA 僕らの肖像」

5人が主演したドラマやアニメの原作者らに
それぞれの肖像画をこの広告のためだけに
描きおろしてもらい、1人1ページずつ、肖像画と原作、
原作へのメンバーの感想などとともに掲載され、
下段が広告になっている。

漫画家さんてすごい!と心から思う。
なかでもハチクロのファンとしては
この一枚にドキッとしました。
ああ、桜井翔だけどまちがいなく竹本だわ。

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メンバーの二宮和也は「鉄コン筋クリート」(画・松本大洋)
▽櫻井翔は「ハチミツとクローバー」(羽海野チカ)
▽松本潤は「花より男子」(神尾葉子)
▽相葉雅紀は「バーテンダー」(長友健篩)
▽大野智は「怪物くん」(藤子不二雄A)。

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松本大洋のニノもとてもすてきです。
とてもニノらしい雰囲気です。

朝日新聞のサイトに載ってますので
どうぞご覧になってください。

http://www.asahi.com/showbiz/manga/TKY201102030315.html

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『海街diary 3 陽のあたる坂道』 吉田秋生 [コミック]

中学生のすずは、父が再婚したため、
再婚相手の陽子とふたりの連れ子と
家族5人で山形に住んでいた。
だが、一年前に父を亡くしてからは
父の葬儀ではじめて会った母親違いの
3人の姉に引き取られ、今は鎌倉で暮らしている。
(【あらすじ】から引用)

父の死で異母妹の“すず”が
鎌倉に住む三姉妹と一緒に暮らすことになる。
「海街diary」は成人している姉3人のエピソードと
新しい場所で暮らしはじめた中学生の“すず”の日々が
丁寧に語られる物語です。

大人と子ども、どちらの世界を描いても
吉田秋生はうまい。
世代が違っても根っこのところの感情は変わらない
という描き方が好きです。
現在連載が進行形の作品で「海街diary」の
コミックス発売を一番楽しみにしています。
もっともっと続きが読みたいです。

『思い出蛍』

最初の出会いから季節がひとめぐりした夏――。
すずと3人の姉たちは、父の一周忌で
再び河鹿沢(かじかざわ)温泉を訪れた。

「お父さんと
ほんのちょっと〈家族〉だった人たちと暮らした
あの山奥の小さな温泉町」

未亡人のはずの陽子さんは町をでていた。
新しい“オトコ”と一緒に。
それを聞いた長女・幸は不快な意を表すでもなく
淡々と施主を引き受ける。

「なんで怒ってくれなかったの?!」
すずは姉に詰め寄る。
「だってひどいじゃん!お父さん かわいそうだよ!」

長い間離れて暮らしていた3人の姉と
ずっとそばにいたすずとでは父に対する感情に
温度差がある。怒って飛び出すすず。
その後で姉たちが話す言葉が本音なのでしょう。
「すずほど熱くなれないや 
…悪いけど」

「でもあたしは ここにはきたくなかった」
「新しい家族なんて欲しくなかった」
「あたし最初からあの人嫌いだった!
好きになろうと思ったけどだめだった」
「なんでお父さんこんな人と結婚したのって
ずっとずっと思ってて!」

「すずは怒っていいんだよ」
「っていうかせめてすずが怒ってやんなきゃ
お父さんかわいそうじゃん?」
チカちゃんはこう言います。

ずっと胸の奥にしまっていたことを言葉に出して
それを受けとめてもらって
すずはまたひとつ心の中の荷物をおろし
身軽になることができたようです。

「なんちゃって弟」の和樹は町に残っていた。
町の人たちの心ないうわさ話がすずの耳に入る。
思わず弟をかばおうとする。
「弟だなんて思ったことないのに」
「偽善者ってこういうことなんだ」

そして和樹からの思いがけない言葉。
すずは今までとは違う視点で
ここでの暮らしを振り返る。

「“嫌い”は“好き”より
ずっと早く伝わってしまうのかもしれない」

自分は偽善者だと思ったけれどそれだけではない。
弟たちの幸福を願う自分をすずは受け入れる。

こういうゆれ動く感情をすくいあげる
なんてうまいんだろう。

「窓のむこう 遠ざかっていく景色は
きのうとは少し 違って見えた。」

姉たちの判断は正しかった。
すずは鎌倉の家に引き取られてよかったね。
まったく、陽子さん、あんたって人は…
現実にもこういう人間は存在する。
あたしってかわいそう。あたしだけが損をしてる。
頼る人がいなければ生きていけない。
自分だけに甘い人。「え~でもぉ~」の人。
一巻でシャチ姉に一喝されたのも当然です。
吉田秋生はこういう人を描写するのも上手いので
読者は登場人物と同じようにイライラするわけで^^;

この本には4編の作品が収められています。
最初の話の感想だけでこの長さ…
ひとつひとつがとても濃密です。

すずとさち姉(ねえ)の恋の行方が
描かれている作品も大好きですが
病気で足を切断した裕也のエピソードが
とても心に残ります。

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タグ:吉田秋生
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文藝別冊 萩尾望都 [コミック]

文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母

文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/05/14
  • メディア: ムック
濃密な内容でした。
編集者の愛情が感じられる出来映えです。
萩尾ファンの方には力を込めてお薦めできます^^

 
・萩尾望都 2万字ロングインタビュー 「わたしのマンガ人生」
漫画家という面だけでなく、
「萩尾望都」の人間としての魅力にも
スポットを当てたインタビューにしたかったそうです。
萩尾さんは、生い立ちから親子の葛藤など
プライベートなことまで語っています。

 
・萩尾望都の解説付き 仕事場&愛猫紹介
あの当時、とても不便な場所だったH市に
なぜ住むようになったのか不思議でした。
光化学スモッグで体調を崩して静かなところに
引っこんだわけですね。

 
・漫画家からの特別寄稿
永井豪が初めて会ったときの印象をこう書いている。
「なにやらオットリしていて、クール。
現実ばなれしたふわフワ感があった。」
「多分、半分くらい異次元の世界に住んでいるのであろう…」
これは萩尾さんが話しているところを見たときに
私が感じた印象と同じです^^

 
山岸凉子さんの文章
「あのサロンには、今思うと才能のかたまりの面々が
ひしめいていたのですが、その中でも、
ひとり自分のカプセルにほっこり入っているかのような
フシギな彼女が印象に残りました」
「その後、何度かお訪ねしましたが(今度は萩尾さんに会いに)
彼女の不思議度は増すばかり!
当然ですよね、だって彼女は
私が初めて出会った天才だったのですから。」


・作家対談 萩尾望都×長嶋有
私はこの対談がとてもおもしろかった。

「言いたいひとこと」を「必ずクライマックスに」
入れているそうです。
「計算して一番印象付けるように」
萩尾さんの作品が端正にまとまっているような
印象があるのはこうした意図が表れているからかな。
そこがちょっと引っかかったときがありました。
(引っかかりすぎて竹宮惠子さんは苦手^^;)
大島弓子さんのフワッと広々とした場所に
誘われるような感覚が好きだったので。


1982年の暮れ、旅行先のモスクワ郊外で
交通事故にあったということは知っていた。
しかしこれほど重篤な症状だったとは…

「モスクワで2週間入院して帰ってきたんですけど、
その後、日本でレントゲンを撮ったら、
頭蓋骨骨折をやっていて、脳外科のお医者さんが
「へんだな、普通ここを割るとね、
脳みそがグチャグチャになっちゃうんだよ」
って言って、本当に九死に一生を
取り留めたことがありました。」

ううっ、萩尾さん、ご無事でよかった。本当に…
(あまりにもいまさらですが)

それから楽観的になったそうです。
「人間って簡単に死ねるんだなって思ったら、
全てのことに対して「まっ、いいか」と
思うようになりました。」

親との確執はかなり深刻な問題で
萩尾さんの作品に深く関わっているようです。
「漫画はくだらない仕事だからやめなさい」
「メッシュ(1980年)」の前ごろに大ゲンカになったそうです。
この時点で萩尾さんに漫画家をやめろと言う人がいるなんて
考えられないことですが親子だとあり得るんですね。

大正・昭和一桁生まれの親とその子どもとは
考え方があまりに違いすぎて葛藤を生みやすいと思う。
自分がそうだったから。
それにしても萩尾さんのご両親は強力です。
がんばって歩み寄ろうとした萩尾さんの努力は
誰にでもできることではないと思う。
よくやったと思う。

・【萩尾望都と私とシンクロニシティ】マット・ソーン
アメリカのマンガ情報・批評誌「The Comics Journal 」のために
2004年12月6日に萩尾氏の自宅で行われた
4時間にもわたるロングインタビュー
そこからの抜粋が載っています。
(まだ日本語では発売されていない)
何よりもおもしろかったのがこれでした。
日本でも全文を紹介していただきたいです!

以下、長文です(_ _。)
 

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